米国・1年先の期待インフレ率が上昇
週明け13日の株式市場は、先週に続いて上値の重い展開となった。14日に1月の米消費者物価指数(CPI)発表を控え、ドル金利の上昇が相場の圧迫材料となった。10年米国債利回りは3.7%台を超えて上昇し、今年の最高水準に達した。
先週末発表されたミシガン大学消費者信頼感指数(2月)で1年先の期待インフレ率が上昇していたことや、足元の底堅い雇用状況が賃金上昇要因と受け止められた。
7日、パウエルFRB議長は、経済団体のイベントで、インフレ加速を示す経済指標がつづいた場合は、金融市場が想定する以上の利上げを実施する用意があることについて言及している。
パウエル議長を始めとするFRB高官の「利上げ維持」発言に耳を傾けて来なかった市場にとっては、今年中に金利が下がり始めるシナリオへの真実味が一段と後退する可能性すらある。そもそも根底にあった、このパウエル議長と市場間における「見解の乖離」が、市場が困惑している「根本原因」だろう。
先週末に発表された中国指標には、一部改善がみられることも確かではある。中国人民銀行が発表した1月の新規融資は市場予想を大きく上回り、過去最大の金額に達した。当局が市中銀行に企業向け融資を増やすよう促しているうえ、1月のPMIでは、製造業・非製造業の期待指数が改善しており、新型コロナウイルスで混乱下にあった中国経済は正常化への歩みを進めている。
また、中国の民間不動産が報道した国内16都市の新築住宅販売は今月以降、大幅に改善していることなど、政府による積極的な支援策を受けて不動産市場のセンチメントは着実に回復し始めた。
しかし、「ゼロコロナ」政策の解除から中国の景況感の見通しは底を打ってきてはいるが、実体経済回復の足取りは重く、時間を要するとの観測が広がりつつある。また、中国の気球撃墜をきっかけに、米中関係悪化への懸念が広がり、ハンセン指数は約1ヵ月ぶりの安値水準まで軟化した。
香港ハンセン指数は小幅続落
ハンセン指数 21,164.42 pt (▲0.12%)
中国本土株指数 7,144.45 pt (+0.26%)
レッドチップ指数 3,994.46 pt (+0.73%)
売買代金1,120億7百万HK$(前日1,197億8百万HK$
13日のハンセン指数は先通し不透明な環境から朝方、安く寄り付いた後は中国本土指数が引けにかけて上昇に転じたことで、ハンセン指数は一時プラス圏まで浮上する場面もみられた。同指数は引けにかけて再び下落に転じ、前日比0.12%安と小幅に続落し、終値ベースで約1ヵ月ぶりの安値を更新した。
米国の金利高見通しの引き上げから、香港不動産の下落が目立った。香港金融金利局(HKMA)はFRBの利上げに追随するペッグ制を導入しているため、住宅金利ローンの影響が不安視された。
香港の不動産投資信託のLink REIT(0823)は12.8%安、香港の大手コングロマリットの新世界発展(0017)は6.7%安、香港デベロッパーの恒基兆業地 (0012)は4.8%安、不動産投資会社の九龍倉置業地産投資(1997)は3.0%安と下げた。
一方、ハイテク株で構成されるハンセンテック指数は同0.29%高と小幅に反発。動画投稿アプリの快手(1024)は3.2%高、動画配信のビリビリ(9626)は2.7%高、インターネット検索の百度(9888)は2.5%高と、先週末大幅反落したIT・ネット株に買いが優勢となった。
中国本土株市場は上海総合指数は前日比0.72%高の3,284.16、CSI300は同0.91%高の4,143.57で引けた。香港株式市場と同様に安く寄り付いた後は買い戻され、徐々に上げ幅を広げた
長谷川 建一
Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>