ここで、法律をしっかりみると「被害者…が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき」は時効によって消滅すると規定されています(民法724条1号)。
そして、離婚からは3年が経過しているので、いわゆる離婚慰謝料というものは、時効により消滅していると考えられます。
しかし、離婚慰謝料と、浮気(不貞行為)による慰謝料は、概念的には別物であると解釈されています。そして、お父様が、最近になって、お母様の浮気の事実を知ったということであれば、そこからまだ3年は経過していませんので、浮気による慰謝料は時効消滅していないということになります。
どのくらい慰謝料をもらえそうか?
次に、「浮気相手の勤め先、顔と車種を把握しています。」とありますが、逆にいえば、それ以外の情報、例えば浮気相手の名前や住所、電話番号、車のナンバーなどは分からないということであれば……。
浮気相手に対して慰謝料請求するには、やはり、その人の名前や連絡先を把握する必要があります。弁護士であれば、電話番号や車のナンバーからその人を特定できることがありますので、今回、車種が分かっているのであればナンバーを突き止めていただき、弁護士に相談するのがよいかと思います。
もし、それが難しいようであれば、探偵に調査を依頼し、浮気相手の住所を突き止めるのも一つの手ですが、探偵の調査費用は必ずしも浮気相手に請求できるものではなく、場合によっては赤字になってしまう可能性があることに注意する必要があります。
また、どのくらい慰謝料をもらえそうかという点は、浮気がどこまで夫婦関係にダメージを与えたかによって変わってきます。
今回のご相談内容によると、婚姻関係が25年と長期であることや、浮気の交際期間も短くないことなどを考慮すると、慰謝料額はそれなりに高額になりそうに見えます。
その一方で、お父様が浮気の事実を離婚前は全く知らなかったとなると、完全に他の出来事が原因で離婚したと認定され、慰謝料が請求できない、というケースも考えられないわけではありません。
全体を考慮して、80~200万円ほど
実際、ご相談内容からは、お母様が「マルチ商法に熱を上げ、地域全体に触れ回って父の会社の空気を悪くしたり、交友関係をなくさせたり」させていたということですので、どうやら浮気とは別の問題による離婚原因もあるといえそうです(浮気相手がマルチ商法をお母様に勧めていた、もしくは浮気相手にお金を使いすぎていたので、マルチ商法に手を出していたなど、他の原因も浮気と関係あると言えれば、また話は変わってきます)。
そうなると、全体を考慮して、80~200万円ほどになることが考えられます。
実際には、浮気をされる前の夫婦の関係は円満であったかどうかということや、浮気の頻度、浮気相手の子どもをお母様が妊娠されたか、お父様のDVの問題がどこまで事実であるか、などといった事情により、さらに変動すると思われます。