(※写真はイメージです/PIXTA)

意外なところで著作権違反は発生します。もし有名キャラクター等にあやかり、一部をオマージュしたオリジナル商品を作成・販売した場合、罪に問われるものなのでしょうか。いわゆる著作権や商標権は、わかっているようで理解が行き届いていなかったりするものです。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、フォントの著作権について松尾裕介弁護士に解説していただきました。

著名商品のフォントでTシャツ作成…

相談者のIさんは、有名なゲームタイトルのフォントを使って、有名なゲームタイトルの一部をオマージュした別の名前のロゴTシャツの作成を考えています。

 

懸念しているのは、著作権法違反に問われるのかどうかです。

 

そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の3点について相談しました。

 

(1)フォントのコピーは著作権法違反に該当するのか。

 

(2)本件で他に法的に問題になりそうな点はあるか。

 

(3)作成したロゴTシャツの商標登録は可能か。

著作権侵害になる可能性は低い?

フォントのコピーは著作権法違反に該当するのか。

有名ゲームタイトルのフォント(字体、書体)を使ったオマージュ作品を作りたいといったニーズは少なくないと思いますが、そもそもフォント(字体、書体)は著作権法で保護されるのでしょうか。

 

著作権法で保護される「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます。

 

この点、書体の著作権性が争われた事件で、最高裁判所は、印刷用書体が著作物に該当するためには、①従来の書体と比較して顕著な独創性を備え、②美的にも優れた特徴を備えていなければならないと判示しています。

 

そのため、フォント(字体、書体)が、例えば、書画であったり、芸術作品・美術品として鑑賞対象となるといった程度にまでなると、フォント(字体、書体)それ自体に➀独創性と②美的特徴を備えているとして、著作権法で保護される「著作物」であると判断される余地があります。

 

そこまでいかない場合には、一般には、フォント(字体、書体)は「著作物」とは認められず、著作権侵害は成立しないと考えられます。

 

最高裁判所は、➀仮に緩い基準で印刷用書体を「著作物」と認めてしまうと、印刷用書体を用いた小説、論文などの印刷物の出版に著作権者の許可が必要になってしまい、著作物の公正な利用に留意しつつ、著作者の権利の保護を図り、文化の発展に寄与しようとする著作権法の目的に反することになり、また、②印刷用書体は、一般には、文字の有する情報伝達機能は発揮するため、必然的にその形態には一定の制約を受けるため、わずかな差異で著作物としての成立を認めてしまうと、印刷用書体の権利関係が複雑となり、混乱を招くことが予想されるといって、厳しい基準で書体の著作権性を判断する理由を説明しています。

 

そのため、有名なゲームタイトルで使用されているフォント(字体、書体)を使用して、その一部をオマージュした別の名前のロゴTシャツを制作したとしても、フォント(字体、書体)それ自体が特に顕著な➀独創性を備え、②美的特徴を有するといった場合を除いて、著作権侵害になる可能性は低いと考えられます。

次ページ他に法的に問題になりそうな点。

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