本件で他に法的に問題になりそうな点はあるか。
著作権法違反のほかに、以下の法令違反の有無を検討する必要があります。
(1) 商標権侵害について
有名なゲームタイトルのフォント(字体、書体)を使ったロゴや文字、その一部をオマージュした別の名前のロゴや文字が商標登録されていないか確認する必要があります。商標登録されている場合には、同一又は類似の商品について同一又は類似の商標を使用した場合には、商標法に違反するおそれがあります。
類似商標に該当するかは、外観、称呼、観念などにより出所混同のおそれがあるかを総合的に判断されますが、実際の状況にもよりますので何とも言い難いですが、フォント(字体、書体)が同じだけで全く別の名称になっているといった場合には、一般には類似商標と判断される可能性は低いと考えられます。
なお、商標権侵害に該当するためには、商標を「商標として使用」する必要があります。
商標とは、そもそも自他の商品やサービスを見分けられるようにし、その商品やサービスを誰が提供しているかという商品やサービスの出所を表すために使用されるものです(自他商品役務識別機能、出所表示機能)。
そのため、たとえ登録済みの商標であったとしても、商標として認められるような態様(Tシャツであれば、例えば、タグへの表示や胸へのワンポイント表示)としてフォント(字体、書体)を使用するのではなく、例えば、Tシャツの胸部の全体に使用するなどフォント(字体、書体)を一種のデザインとして意匠的・装飾的に使用した場合には、商標自体の周知性(広く知られているか)にもよりますが、商品やサービスの出所を表したものではなく「商標的使用」に当たらないとして、商標法違反にはならない可能性があります。
もっとも、「類似」するかしないか、「商標的使用」に該当するかの判断は微妙であり、紛争になるおそれが少なくありませんので、登録済みの商標である場合には、事前に商標権者の許諾を得るか、他人の登録済み商標と同一又は類似する商標の使用は控えたほうが無難です。
(2) 不正競争防止法違反について
有名なゲームタイトルのフォント(字体、書体)を使ったロゴや文字、その一部をオマージュした別の名前のロゴや文字が商標登録されていない場合であっても、その表示が広く知られている表示(周知表示又は著名表示)である場合には、出所識別機能を有する態様で当該表示と同一又は類似の表示を使用した場合には、他人の知名度を利用して不当な利益を得ているとして、「周知表示混同惹起行為」又は「著名表示冒用行為」として不正競争防止法に違反するおそれがありますので注意が必要です。
作成したロゴTシャツの「商標登録」は可能か?
有名なゲームタイトルのフォントを使って有名なゲームタイトルの一部をオマージュした別の名前のロゴや文字が商標登録されておらず、登録済みの商標と類似の商標に該当しない場合には、商標登録をすることが可能です。
もっとも、未登録の商標であっても、「他人のよく知られている商標(周知商標)と同一又は類似の商標」、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」や「よく知られている商標(周知商標)と同一又は類似で不正の目的をもって使用をする商標」については、拒絶理由に該当し、商標登録が認められませんので注意が必要です。
有名ゲームタイトルのフォント(字体、書体)を使ったオマージュ作品のみならず、商品にロゴや文字を付して販売するといったケースは少なくないと思いますが、このように、商品へのロゴや文字の使用については、著作権法、商標法、不正競争防止法と知的財産権に関する複数の法律が関係し、法令違反の有無の判断も具体的な状況によって異なり容易ではありませんので、商品化の前に事前に知的財産権に精通した弁護士、弁理士にご相談されることをお勧めします。