(写真はイメージです/PIXTA)

名前が似ている「遺産分割証明書」と「遺産分割協議書」。どちらも遺産分割協議がまとまったことを証明する書類ですが、それぞれ異なるものです。どのような違いがあるのでしょうか? 相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

遺産分割“証明書”を作るメリット

遺産分割「協議書」ではなく、遺産分割「証明書」を作成するメリットは、次のとおりです。

 

署名捺印にかかる時間を短縮できる

遺産分割協議書は1枚の用紙に相続人全員が署名捺印をするため、1人が署名捺印をした用紙を次の相続人に回していき、順に署名捺印をもらう必要があります。そのため、全員の署名捺印が完了するまでに、時間がかかることが多いといえます。

 

一方、遺産分割証明書は個々の相続人のみがそれぞれの用紙に署名捺印をすればよいものであるため、署名捺印にかかる時間を短縮することが可能です。

 

遠方の相続人に対応がしやすい

相続人が簡単には集まることのできない遠方に散らばっている場合には、1枚の遺産分割協議書に全員の署名捺印をそろえることは大変です。1枚の用紙を、郵送などで順に回していく必要があるためです。

 

一方、遺産分割証明書は、各相続人に書類を送ってそれぞれから返送してもらえばよいため、遠方の相続人への対応がしやすいといえるでしょう。

 

全員の署名捺印を揃える途中での「紛失」や「毀損リスク」を下げられる

1枚の用紙に相続人全員の署名捺印を揃えていく遺産分割協議書の場合には、せっかく途中まで署名捺印が集まった用紙を一部の相続人が紛失したり誤って毀損したりしてしまった場合、改めてほかの相続人からも署名捺印をもらいなおさなければなりません。気難しい人がいる場合には、再度の押印に応じてくれない可能性もあるでしょう。

 

一方、遺産分割証明書は相続人ごとに用紙が分かれていますので、仮に一部の相続人が用紙を紛失したり毀損したりした場合でもほかの相続人の署名捺印には影響しないため、安心です。

遺産分割“証明書”を作るデメリット

遺産分割「協議書」ではなく、遺産分割「証明書」で手続きを進める場合のデメリットは、次のとおりです。

 

十分な話し合いがないまま押印を求められる場合がある

本来、遺産分割協議書も遺産分割証明書も、あらかじめ遺産分割協議を行い、その結果を書面にまとめたものであるはずです。

 

しかし、遺産分割証明書の場合、十分な話し合いのないまま突然書類が送られてくるなどして、署名捺印を求められる場合もあるようです。納得ができない場合には押印してしまうことのないよう注意しましょう(とはいえ、遺産分割協議書の場合でも同様の対応がなされることもありますので、同じく注意は必要です)。

 

相続人の数だけ必要となるため書類がかさばる

相続人の数が多い場合には、その人数分だけの遺産分割証明書が必要となります。そのため、書類がかさばりやすいといえるでしょう。

 

ほかの相続人の押印状況が見えにくい

遺産分割協議書の場合には、自分より先に書類がまわってきた相続人の署名捺印がある状態で書類が手元に来ますので、ほかの相続人が押印したことや進捗状況が見えやすくなります。

 

一方、遺産分割証明書では、ほかの相続人の押印状況はわかりません。この点は、見方や立場によってはメリットともいえ、デメリットともいえるでしょう。

 

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