※画像はイメージです/PIXTA

新選組の土方歳三とホンダの藤沢武夫は、どちらも「ナンバー2」として陰から組織を支えました。本記事では、2人の振る舞いからトップとなる経営者を成功に導く共通点とはなにか考察していきます。

 

「ナンバー2」の土方歳三と藤沢武夫の共通点

矢面に立つ

新選組では、実際の指揮の多くは近藤ではなく土方が行っていたという話も残っていますし、近藤の死去後、宇都宮城での戦いや北海道での作戦では、土方は近代戦術を取り入れた優れた戦略家としての一面も見せています

 

京都に上がってきた、腕っぷしが自慢の農民や浪人たちは、血気盛んで、複雑な時代背景の下、さまざまな信条を持っていました。いってしまえば、とんでもない暴れん坊ばかりで、1つにまとめようとしてもなかなかまとまらない輩衆であったことは想像にかたくないところです。土方も、いばらのようにとがった小僧という意味で、「バラガキ」と地元で呼ばれたやんちゃな男です。

 

一方で、江戸の商家に10年近く丁稚奉公(当時は非常に厳しかったといいます)していたこともありました。土方には洗練された側面があり、新選組でも資金調達などでその手腕を発揮します。

 

荒くれ者が集まって、京の治安を守るために幕府の後ろ盾を得て結成されたのが新選組です。そんな集団ですから、統括するには厳しい秩序が必要でした。それが「局中法度」と呼ばれる新選組の鉄の掟です。内容は、「脱走しない」、「勝手に金を借りない」などですが、破れば死です。 最大200人いたという新選組において、50余人も切腹誅殺に処されたといわれています。それを命ずるのがナンバー2の土方です。

 

筆者が最近観た『燃えよ剣』では、「そんなに人を殺しては恨みを買い組織は崩壊する」と忠告された土方が、「近藤さんが直接手を下すと近藤さんが恨まれて組織が壊れる。自分が副長として組織に必要な規律を守るために、厳格な処分を続けなければ、新選組は近藤さんと目指す最強の剣客軍団にはなれない」と答える場面が描かれます。

 

『燃えよ剣』はフィクションですから、実際にこういう発言をしたかどうかはわかりません。ただ、嫌われ役を買って出たことは確かでしょう。それは、土方の覚悟が成せたことだと思います。

 

ホンダにおいても、矢面に立つのは常にナンバー2である藤沢です。会社が倒産の危機に瀕したときの話です。取引先への交渉も労働組合との団交も、藤沢は「必ず処理する」と本田に約束します。そのあいだ、社長である本田に、「海外に行っていたほうが対外的にも都合がよい」と説得し、本田を海外に行かせます。そして藤沢は見事に問題を1人で片付けます

 

海外から帰ってきた本田は、空港で藤沢に迎えられます。「どうだった」と本田が聞くと、藤沢が「大丈夫だ。会社は潰れない」と答えました。その瞬間本田は藤沢の手を握り、ボロボロ泣いたといいます。

 

嫌われることを厭わない

土方も藤沢も、約束を果たすためには部下に嫌われることを厭わず、自らの役目を全うしました

 

たとえば、土方のこんな話があります。近藤が先に世を去ったあと、土方は新選組のトップとして五稜郭まで北上を続けます。かつて鬼の副長と呼ばれた土方は、このときには、部下から「赤子が母親を慕うように」好かれていたそうです。ナンバー2でなくなった瞬間、「鬼」になる必要はなくなったのです。そして、取り残された部下を自ら救いに出た際、敵に撃たれて最期を迎えました。

 

藤沢も大変厳しい人物で、所構わず部下に罵詈雑言を浴びせ、部下からは「ゴジラ」と陰で呼ばれていたそうです。しかし、引退後は一切経営には口を出さず、文化人として音楽や演劇を鑑賞し、美術品に囲まれながら穏やかに過ごしました

 

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