(※写真はイメージです/PIXTA)

口約束で、契約書に代えて取引をするケースは、友人関係ならそれほどめずらしくないかもしれません。いわば、2人の絆が担保の契約。問題は2人の関係が“何らかの事情で壊れた時”です。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、契約書のない取引の有効性について鈴木崇裕弁護士に解説していただきました。

大家が急逝。身内も高齢で話ができない、どうすれば…

相談者のNさんは、昔から知人関係があった方の所有する建物に住んでいましたが、半年前にその方が急逝してしまいました。

 

Nさんは居住権を移して3年になりますが、とくに大家さんと賃貸契約書は交わしていません。

 

また大家さんの身寄りは兄弟しかおらず、相談もしてみましたが、高齢で話ができない状況です。大家さんには借金もあったようで、状況次第では物件が銀行の手に渡る可能性もあると聞いていました。ただ、詳細までは教えてもらえず、今現在もなんら動きはありません。

 

Nさんは建物の購入も考えていましたが、現在は状況が不透明でもあり、ひとまずそのまま生活を続けています。

 

今後もこのまま住み続けたい意向ですが、Nさんにはいくつか気になることがあります。

 

・家賃は仕事で相殺していたため、実質発生していなかった

・賃貸借契約書がない

・抵当に入っていた可能性があり、銀行の手に渡ってしまうかもしれない

 

Nさんは、周囲から「下手に動かない方がいい」と進言されているそうですが、生活の基盤となる住居のことなので気が気ではありません。

 

そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の3点について相談しました。

 

1.このまま住み続けることは法的に問題ないのか。

2.賃貸借契約書がないことでなにか問題はありそうか。

3.物件が銀行に渡ることを止める方法はあるのか。

当面は居住できる、が…

大家さんが亡くなり相続が発生しても、当面は、引き続き居住を継続することができると思われます。

 

Nさんの居住権の法的根拠は、賃貸借契約によるものか、または使用貸借契約によるもののいずれかであると思われます。

 

「賃貸借契約」とは、賃料を支払って物件を使用させてもらう契約のことで、「使用貸借契約」とは、賃料を支払わずに物件を使用させてもらう契約のことです。

 

法律上、どちらの契約も、貸主に相続が発生しても当然には終了しないこととされているので、大家さんの相続人は、原則として貸主としての地位を承継し、Nさんに使用させ続けなければならないことになります。しかし、場合によっては一定の時期に退去しなければならない可能性もあります。

 

まず、居住権の法的根拠が賃貸借契約の場合と使用貸借契約の場合とを比較すると、特に次のような“重要な差異”が生じます。

 

(1)まず、契約の終了する時期が異なります。

 

賃貸借契約の場合には、あらかじめ契約で定めた満期が到来しても、貸主が「正当事由」(建物を自己使用する必要性があるなど、契約を終了させるための合理的な理由)を備えない限り、契約は更新されます。

次ページ居住権を主張できる「条件」と準備しておくべき「証拠」

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