「同調圧力」を前向きに使うと、組織の力をアップさせることも
プレッシャーは伝播する
「同調圧力を活用する方法」をお伝えしましょう。私がこの同調圧力のすごさに気がつくことができたのは、アメリカにいた学生時代でした。
その発端は、物理の授業のときに、マサチューセッツ工科大学の博士号を持っている厳しい教授が、「5人のグループになってこの計算式を解いて、実験で成功したグループから帰っていいぞ!」と珍しいことを言ったことからです。
その教授は、いつも講義の手を抜かない人なので、早く帰れることなんて考えられません。
でも、私を仲間にしてくれたグループは「みんなで計算を分担して誰よりも早く20分で帰って教授の鼻を明かすぞ!」と、集まるなりすぐに計算をそれぞれのメンバーに割り振りはじめました。
すると、私も「自分が間違ったらメンバーに迷惑がかかる」という適度なプレッシャーがかかったので、計算の速度がいつもより上がります。
その結果、次第に周りのメンバーの問題を解く熱量も上がっていきます。
そして、見直しで間違っていないことを確かめて「できた!」と手を挙げると、他のメンバーも同時に「できた!」と手を挙げ、みんなの計算を持ち寄って教授の前で実験を開始しました。
しかし、教授はそんなに早くできてしまう心づもりではないので、「君たちは早すぎるから、絶対にこの実験は失敗するよ!」と馬鹿にしたような顔をします。
でも、私は「いや、教授、ほら見てください! ちゃんと計算は合っていますから!」とお願いをして実験をしたところ、本当に20分で成功してしまいました。
ちなみに、この実験は2時間かかっても成功させられなかったグループがあり、私たちの次に早かったグループでも1時間半かかったぐらい、難易度の高いものだったのに、です。
また、別の日には、大学のバレーボール大会があって、バレーボールが大好きだった私は、全然知らない人たちのチームになぜか入れてもらえました。
「よーし! 勝つぞ!」とみんなでかけ声をかけて、試合に臨みます。
私は「せっかくチームに入れてくれたのだから、みんなに迷惑をかけないように頑張らなきゃ!」と、ここでも適度な同調圧力を感じながら、試合に参加します。
すると、みんなにも適度な同調圧力が伝播したのか、ミスをするとアメリカ人らしくもなく「ミスしてごめん! 次は頑張る!」と声をかけてきます。
そうなると、みんなも「気にするな! がんばれ!」とさらに励まし、協力し合って、お互いのミスをカバーしながら何試合も勝ち進んで、いつの間にか学校内で優勝してしまったんです。
こうしたチームワークというべき同調圧力は、いわゆる「自由を奪って人の能力を発揮できないようにする同調圧力」とはニュアンスが違っています。
むしろ、お互いの能力を引き出して、チーム内にすごい力を発揮させることができたのです。