米国上場企業はすでに「人的資本の情報開示」にシフト
2020年8月、米国証券取引委員会(SEC)がレギュレーションS-Kの改訂を発表し、上場企業に対し人的資本の情報開示を義務付けることを明確にしました。レギュレーションS-Kは、財務諸表以外の情報開示に関するSECの要求事項で、8月の改訂により人的資本の状況説明を求める旨の記載が追加されました。ビジネスを理解するうえで必要な範囲で目的や措置の内容を開示することが求められています。
例を挙げると、雇用する従業員数の開示に加え、ビジネスを理解するうえで重要な場合、人的資源の説明や経営者が重視する手段または目的――人材の誘致、育成、維持定着に関する対応や目的などの開示が要求されています。
これらの規定は義務ではなく、具体的な開示内容が指示されているわけではありませんが、SECの方針が明確になったことを受け、人的資本の情報開示が経営の指標として必要不可欠な要素と認識されていくのは、今後の世界の流れとして明白になったといえます。
2018年12月、ISOが人的資本のガイドラインを公開
もうひとつ、経営者・人事トップへ人的資本に関する情報開示を求める動きが加速していることを示す例を挙げましょう。国際標準化機構(ISO)の動きです。非財務情報の開示のうち、特に人的資本のガイドラインとして注目されているのがISO30414です。ISO30414は、ISOとしては初の人的資源マネジメントの規格で、2018年12月に公開されました。
人事・組織に関する情報開示(Human Capital Reporting:HCR)に盛り込むべき内容として、組織文化、健康経営、コンプライアンスと倫理、採用、離職、生産性、スキルと能力、リーダーシップなど、幅広く人材マネジメントに関する基準を設けています。
ISO30414は海外ではすでに浸透しつつあり、日本国内においても、対応する動きは加速しています。今後、最低限の人的資源に関する情報開示の基準としてISO30414が機能していくと予測されます。ISO30414の項目すべてに対応しなければならないわけではなく、業種や企業規模など状況に応じて変わります。
ただし、どの項目においても客観的なデータを伴って説明する必要があり、ISO30414のなかで、各項目について開示すべきデータの意味と方法が解説されています。SECのレギュレーションS-Kが具体的な開示の項目や基準を示していないため、ISO30414は企業が頼る重要な指標のひとつとなっていくことは間違いありません。
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