(※写真はイメージです/PIXTA)

ロシア経済の荒廃は儲けのチャンスです。そこで誰が得するかといえば、間違いなくアメリカです。ウクライナ侵攻は、ますます米国のドル覇権が強まる結果をもたらすことになります。ジャーナリストの田村秀男氏が著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

ロシアに儲けのチャンスがある?

■ロシアの何が狙われるのか

 

広大な領土からのエネルギーなど資源の採取に偏するロシア経済と逆なのが中国です。漢王朝の時代から模倣ばかりやってきた国柄ですから、よその国で開発したものを模倣して生産する製造業でも効率のいい方法に長けていて、そのうえ勤勉な国民性があります。最近はメリットが薄くなってきているようですが、人口も多いので人件費も比較的低く抑えることができます。

 

その中国に比べれば、ロシア人は大量生産・大量消費の伝統をもたない国民性で、製造業に向かない国柄です。だからペレストロイカ以来、製造業を国の柱にすることを悲願にしてきたにもかかわらず、なかなか実現しませんでした。それは、ウクライナ戦争後も変わることはないでしょう。

 

そうであれば、戦争後のロシアに西側諸国の投資家が乗り込んでいっても、投資する対象がないように思われがちです。しかし、そんなことはない。戦争で疲弊し切ったロシアは、じつは儲けのチャンスが転がっている場所でもあるのです。

 

ボロボロになった資産でも、それを証券化して売りさばいてしまうのが金融市場です。米国の信用度の低い借り手向け住宅ローン、いわゆるサブプライムローンも証券化されて世界中で取引されました。それがリーマン・ショックを引き起こす原因にもなったわけですが、それほど広範囲で取り引きされていたということです。リーマン・ショックでは損失ばかりが注目されますが、それ以前に大儲けした人たちもかなりいます。

 

言い方を変えれば、ボロボロになったものほど証券化することで儲けにつながる可能性は高くなるということです。破壊は儲けるチャンスです。その意味では、ウクライナ侵攻でボロボロになったロシアには、投資家が儲けるチャンスがゴロゴロしていることになります。それを見逃す投資家はいないはずです。

 

安値で買い叩いた証券や債券などの資産を高値で売りさばいて大儲けするのが、いわゆるハゲタカファンドです。バブル崩壊後の日本でも、このハゲタカファンドが暴れ回って大儲けしています。同じことが、戦後のロシアでも間違いなく起きます。

 

ソ連の崩壊後に政府と結託して事業を拡大し、プーチンとも密接な関係を築くことで急速に富を増やしていったオリガルヒと呼ばれる大富豪がロシアに存在しますが、プーチン失脚後には彼らの政治的影響力が失われるはずです。それをハゲタカファンドが見逃すはずもなく、身ぐるみ剝がれてしまうのは確実です。

 

国際金融という場で、ロシア経済の荒廃は儲けのチャンスです。そこで誰が得するかといえば、間違いなく米国です。ウクライナ侵攻は、ますます米国のドル覇権が強まる結果をもたらすことになります。

 

プーチンが脱ドルによってロシア帝国の再興を狙うのがウクライナ戦争なのですが、北欧フィンランドとスウェーデンの二ヶ国、さらに肝心のウクライナまでもがNATO陣営に加わる結果になりそうです。

 

結局、ロシア経済再生のためには西側金融資本に頼らざるを得ません。それが嫌なら、核を使って徹底的に周辺国を叩きのめすしかありませんが、そうするとロシア自体も核の報復攻撃を受けて焼け野原、そうでなくとも死の灰に覆われて、住めなくなる恐れがあります。

 

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本連載は田村秀男氏の著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

日本経済は再生できるか

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田村 秀男

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