ロシアのウクライナ侵攻の勝者は「グローバル金融資本」の皮肉 (※写真はイメージです/PIXTA)

グローバルな金融資本は、平和であろうとなかろうと、さらに悲惨な戦争が起きても、それらをすべて強欲実現のチャンスに変えています。カネ儲けのためにも、西側諸国はロシアを潰すようなことはしないでしょう。ジャーナリストの田村秀男氏が著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

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ロシアの戦争遂行能力は限界にきている

■ドル覇権vsプーチン「核の恫喝」

 

西側世界の対ウクライナ軍事支援と対露金融制裁に対抗するプーチン大統領の切り札は「核」と「天然ガス」です。プーチンはウクライナのゼレンスキー政権への西側の軍事援助ばかりでなく、ロシア経済を崩壊させかねない西側の全面的経済制裁を牽制するために「核の恫喝」を繰り出す恐れは付きまといます。

 

プーチン政権は平然と戦術核の使用をほのめかします。1970年3月に発効した核拡散防止条約(NPT)体制下で「核兵器国」のお墨付きをもつロシア、米国、中国など五ヶ国が核を独占する代わり、核をもたない国に対して核の脅しを控える不文律は反古同然なのです。

 

欧州各国の専門家による分析ネットワーク「CIVITTA」の4月11日付推計によると、2月24日のウクライナ侵略開始後45日間で、ロシアの軍事上の損失は278億ドルに上りました。内訳は航空機約97億ドル、ミサイルなど火器が約44億ドル、戦車・軍用車両が約35億ドル、人的損失が約101億ドルです。1日当たりでは6.1億ドル、ひと月当たりで185億ドルとなります。

 

グラフ2-⑦はロシアの軍事損失と、昨年(2021年)のロシアの原油・エネルギー輸出1656億ドルと国防支出昨年合計485億ドル(ロシア財務省統計)について、それぞれ四五日当たりに換算しました。損失は国防支出の4.6倍を超え、エネルギー輸出収入の1.4倍弱となります。

 

3ヶ月間この調子だと、軍事損累積は554億ドルとなり、昨年1年間の国防支出を軽く突破してしまいます。ウクライナ侵略コストは虎の子のエネルギー収入を食いつぶして余りあるのです。戦争遂行能力は財政面で、限界点に差しかかっていると言えます。

 

国防費データは、各国によって構成内容が違います。国際的な共通基準を基に算出するストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の2020年のデータは、ロシア617億ドル、中国2523億ドル、日本491億ドルです。同年のGDPはロシア1.48兆ドル、中国14.7兆ドル、日本5兆ドルあまりであり、ロシアの軍事費は経済力に比べるとかなり高いと言えます。

 

それでもユーラシア大陸の広大な領土のわりに金額規模が小さい印象がありますが、旧ソ連時代から引き継いだ巨大な核装備の蓄積が西側世界を威圧するのです。ロシア財務省統計によれば、核兵器部門への支出は6.4億ドルで、国防支出の1.3パーセントにとどまります。

 

日米欧による制裁はロシア経済の構造的脆弱さを衝いています。通貨ルーブルは国際金融市場では相手にされず、貿易や投資は依然としてドルなど西側主要通貨建てにするしかありません。

 

前述したように、ルーブル価値の裏付けとなる外貨資産の5割は日米欧の中央銀行に預けています。2月下旬に西側が科した金融制裁はドル、ユーロ、円などの国際決済を仲介する国際銀行間通信協会(SWIFT)からのロシアの金融機関の一部の排除と、西側が管理するロシア保有の外貨資産の凍結が主です。

 

繰り返しますが、これらの制裁は部分的で、逃げ道付きです。欧州はウクライナ侵略開始に合わせて打ち出したSWIFT排除リストから、ロシア最大手の銀行ズベルバンクと天然ガス決済銀行であるガスプロムバンクなどを外しましたし、原油やガスの輸入も止めようとしませんでした。

 

そして対露制裁の限界が露わになった6月初めに、ズベルバンクのほかクレジット・バンク・オブ・モスクワとロシア農業銀行をSWIFTネットからの排除対象に加えました。これは欧州連合(EU)加盟各国が打ち出した、海上輸送による原油輸入を6ヶ月以内、石油製品輸入を8ヶ月以内に停止するという制裁強化の一環です。ただし、ロシア産への依存度が高いハンガリーやほかの内陸国への配慮から、パイプラインを通じた原油輸入は一時的に禁輸の対象外としています。

 

石油については段階的に禁輸に踏み切ると言いますが、内部では反対論もくすぶっています。ロシアはCIPSによる中露決済を広げ、外準構成資産のうちドルを人民元に置き換えつつあります。禁輸のためにハイテク兵器部品などの調達は困難になっているものの、ほぼ無傷のエネルギー輸出によって、従来どおり外貨ははいってくるので、戦争当初暴落しかけたルーブル相場は落ち着きを取り戻しつつあります。

 

軍事損失は巨大でもプーチンは核使用をちらつかせながら強硬路線を押し通し、ウクライナ東部の制圧を遂げ、「勝利」を宣言するかもしれません。

 

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    産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員

    1946年高知県生まれ。70年早稲田大学政治経済学部経済学科卒後、日本経済新聞入社。ワシントン特派員、経済部次長・編集委員、米アジア財団(サンフランシスコ)上級フェロー、香港支局長、東京本社編集委員、日本経済研究センター欧米研究会座長(兼任)を経て、2006年に産経新聞社に移籍、現在に至る。主な著書に『日経新聞の真実』(光文社新書)、『人民元・ドル・円』(岩波新書)、『経済で読む「日・米・中」関係』(扶桑社新書)、『検証 米中貿易戦争』(マガジンランド)、『日本再興』(ワニブックス)がある。近著に『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)がある。

    著者紹介

    連載「物価だけが上がり給料は上がらない」最悪の未来は続くか

    本連載は田村秀男氏の著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

    日本経済は再生できるか

    日本経済は再生できるか

    田村 秀男

    ワニブックス

    今覚醒しないと日本経済の未来はない! 「物価だけが上がって給料は上がらない社会」からどうすれば脱却できるのか、ロシア・ウクライナ戦争をきっかけにして見えた状況を分析。政治・企業・マスメディアが今変わらなくては「…

    「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

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