(※写真はイメージです/PIXTA)

仕事をしていないときに自然にアイデアが湧いてくることあります。一方で気合を入れてもアイデアをひねり出すことはできません。近年、その根拠が脳科学の進歩で解明されてきました。IT&キャリアコンサルタントの谷藤賢一氏が著書『ペヤングソースやきそばで学ぶ問題解決力』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

バカバカしい会話から生まれるヒント

■結論を目的にしない会議「ブレインストーミング」

 

気さくに意見を言い合う会議、それが「ブレインストーミング」です。

 

「ああ、ブレストね。あれうまくいった試しがないよ。」

 

それはやり方が間違っていたのでしょう。時間内に結論を出そうとしたら発言が恣意的になります。それではアイデアは湧いてきません。むしろ結論を出すことを禁止するくらいでちょうどいいと思います。

 

人は「それダメだよ」と言われるとアイデアが湧いてこないばかりか、意見も出さなくなります。否定的な反論も禁止です。自由に、気さくに、ときにはバカバカしく。

 

「CO2以外に温暖化の原因って何だろうね?」
「たぶん宇宙人のしわざだよ。」

 

こんなバカバカしいやりとりも「あり」にするのです。

 

イノベーションの芽って、最初はバカバカしいことが多いものです。アインシュタインの特殊相対性理論だって、最初はバカにされたのです。

 

イノベーションの芽を摘まないためには、バカバカしい意見を容認する場が必要です。結論禁止で何でもありの場さえあればブレインストーミングはうまくいきます。まさかのアイデアも飛び出します。

 

実際に飛び出した例をお見せしましょう。

 

最初はあるベンチャー企業のブレインストーミング会議で飛び出したアイデアです。

 

アルミ製の放熱フィン付きヘルメット。被ることで知恵熱が効果的に放熱され頭がスッキリするという製品。社長が率先して発表したアイデアです。

 

新商品「知恵熱放熱器」。
新商品「知恵熱放熱器」。

 

一瞬笑いが起こりましたが、社長は真剣。もちろん商品化を考えたのではありません。

 

「ブレインストーミングとはこういうことだよ」と示してくれたのです。

 

「こんなアイデアが容認されるなら、じゃあ、アレ言っちゃおうかな」という気分になります。

 

こうしていろんなアイデアが飛び出してくる場ができたのです。

 

次は天文学の打合せで実際に飛び出したアイデアです。

 

大型の天体望遠鏡を完全に水平に設置するにはどうしたらいいか。そんな会議でのこと。

 

レーザー装置を使う、高額なレンズと星の位置から計算するなど、実現性が困難なアイデアばかりで議論が膠着状態になったときのことです。

 

「水に浮かべればいいんですよ。」

 

 

あっさりと関係者から出たアイデアでした。

 

もちろん、天文台の中に池を作って本当に望遠鏡を浮かべろと言っているのではありません。考え方のアイデアです。これを発端にたくさんのアイデアが飛び出しました。

 

「筒先から重りの付いたヒモを垂らしてその先端が中央にくるようにすればいい」という、レーザーも高額なレンズも使わず高い精度が出せる方法が生まれたのです。

 

「水に浮かべる」というアイデアを誰もバカにしない安全な場であり、結論を急がないからこそあっという間に生まれたのです。

 

次ページイノベーションの芽は簡単に潰される

本連載は谷藤賢一氏の著書『ペヤングソースやきそばで学ぶ問題解決力』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

ペヤングソースやきそばで学ぶ問題解決力

ペヤングソースやきそばで学ぶ問題解決力

谷藤 賢一

日本能率協会マネジメントセンター

なぜペヤングソースやきそばが問題解決につながるのでしょうか。それは、カップやきそばを選び、作り、食べるまでのプロセスを分析すると、問題解決の手法をとてもわかりやすく説明することができるからです。 本書では、露地…

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