価格差は「500円」だが…あなたはどちらを選ぶ?
セイリアンスがどのようにみなさんの購買行動に影響しそうか、ここで質問です。
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【質問1】1万5000円のジャケットを買おうとしています。10分ほど歩いた別の店舗で同じ商品が500円安く売られているとき、そちらの店舗まで歩きますか?
【質問2】1500円のTシャツを買おうとしています。10分ほど歩いた別の店舗で同じ商品が500円安く売られているとき、そちらの店舗まで歩きますか?
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多数派の人であれば、質問1では購入する店舗をわざわざ変えないのに、質問2では歩いて違うお店に買いに行きます。
ここまで読んできたあなたなら、この質問と回答の関係のおかしさは気づいていただけるでしょうか?
どちらの質問も、聞かれているのは「10分歩いて500円節約する気はありますか?」ということでしかありません。
この質問の背景にはフレーミングの影響もあるのですが、おそらく多数派の人はこう考えたはずです。
「1万5000円の買い物のときの500円はわずか3%に過ぎず、大した違いはない。でも、1500円の買い物のときには30%を超していて大きな違いだ」
つまり、単なる500円の差は、安い買い物をするときに、より注目されることになったわけです。こうした購買行動の特徴は、主に次の2点にまとめられます。
●何を買おうとしているかというコンテクストによって、(たとえば品質を気にするか価格を気にするか)判断の軸は変わる
●商品の価格や品質の差は、単純な差ではなく、基準となる商品との比率で捉えられている
1点目については、家を建てたり結婚式を挙げたり、車を購入するとなれば、お金を平然と使う状況を思い返してみてください。
特別なシチュエーションでそのもの自体がもたらす価値(品質)に関心がいってしまえば、価格差はあまり判断の重点とはならない、というわけです。
2点目についてはもう少しだけ確認しましょう。質問1でも質問2でも割り引かれる金額は変わらないのに、なぜだか1万5000円の買い物をするときのほうが気になりませんでしたよね。
これは1万5000円という参照する数字を基準に、比率で節約額の価値を計算しているということになります。
たとえば、普段、スーパーマーケットの買い物では発泡酒の10円差を気にするのに、高級焼肉店では焼酎の100円差は気にならないという状況です。
つまり、高額な商品を買うときには消費者は価格の差をそこまで気にしないのに、低価格の商品を買うときほど細かな価格差が関心を集めやすい、というわけです。