自己紹介のエピソードは成功体験がいい
■エピソードを聞くと「人となり」が分かる
私の場合は、事前に、「エピソードによる自己紹介」を受講者一人一人にA4一枚程度で用意してもらっています。エピソードによる自己紹介といっても、ピンとこない人もいるので、次のような実際にあった事例をご紹介しています。
▶私の嬉しかった体験例/情報システム会社勤務の佐藤さん(仮名)の例
「はじめまして、私は情報システムサービス株式会社(仮称)の佐藤隆と申します。では、私のうまくいった体験を紹介させて頂きます。
私は現在、同社において、情報システムの構築のプロジェクトリーダーをしています。ちょうど入社した時期がバブル崩壊後で、景気が悪くなり、私は新入社員として入社したのですが、システム構築の仕事が少なくなってきたため、入社するなり、子部品を作るグループ会社に出向させられました。
そのグループ会社では、電子部品の設計のような仕事をやることになったのですが、私は、もともとシステム構築をするのが夢でその会社に入ったので、昼休みになると、新しいシステム言語であるC言語のテキストを読んでは勉強を続けていました。
そんなある日、私が所属していた部署の課長から飲みに誘われました。ガード下の赤提灯で乾杯するとすぐ課長が、「佐藤、おまえシステム開発がやりたいんだろう?」と尋ねるのです。私がこくりと頷くと、「だったら、オレが親会社に戻れるようにしてやるから、そのように配置転換願いを出せよ」と言ってくれたのです。私は、うれしくて課長に感謝しながら、すぐに課長に配置転換願いを出したのです。
すると間もなく辞令が出て、もともと入った会社に戻って、システム開発の仕事ができるようになりました。しかも、当時最先端のネットワーク関係の仕事をやらせてもらい、1年後にシステムがリリースされた時には、私が所属したプロジェクトは、ラッキーにも会社から表彰を受けました。
大変うれしかったです。これは当時の課長にあの時声を掛けてもらわなければ実現しなかったことです。課長には大変感謝しています。 もちろん彼とは今でも年賀状をやり取りする仲です。私の成長を見守ってくれているようで、大変うれしく思います。
私は、自分の夢を諦めないで本当に良かったと思いました。以来、私は、自分のやりたいことには徹底してこだわって仕事をやるようにしています。以上簡単ですが、私の体験を紹介させていただきました。」
いかがでしょうか? 佐藤さん(仮名)がどんな人か、その人柄が垣間見られたでしょうか。少なくともこのエピソードから分かるのは、佐藤さんは自分のやりたいこと=夢があって、たとえ恵まれない境遇にあっても、それを諦めずに追い求める人で、そういう姿勢が周りにも伝わり、その夢の実現をサポートしてあげようという理解のある上司に恵まれた人であるということが分かるのではないでしょうか。
このようなエピソード例を参考にして、受講者自身の「嬉しかった体験」「うまくいった体験」を事前に準備してきてもらいます。どんな人でも、自分自身の体験の中で嬉しかったことや思いがけずうまくいったことはあると思いますので、そのようなことについてA4一枚程度でまとめてきてもらうのです。
■エピソードの選び方
自己紹介用のエピソードは、自由に選んでもらって構いませんが、なるべく自分が嬉しかった体験を選んでもらうといいと思います。その体験を思い出して明るい気持ちにもなれますし、周りの人も「良かったですね。」とうなずきやすいです。
中には、苦しかった体験や悲しかった体験を語る人もいますが、その体験を思い出して本人が暗くなってしまうことが懸念されますし、周りの人も「それは大変でしたね。」と同情はしてくれますが、そこから先前向きな話はしにくくなります。
できれば、「うまくいった体験」「成功体験」を選ぶと良いと思います。なぜなら、うまくいった体験には、その人の良い点、強みが隠されていることが多いからです。
逆に、「残念な体験」「失敗体験」の場合は、その人の弱いところ、弱点が隠されていることが多いです。あえて弱点を探すためのストーリーテリングであれば、それもいいかと思いますが、前向きの取り組みを行う際には逆効果となります。
できるだけ社会人になってからの体験がいいと思いますが、中には学生時代の嬉しかった体験を語りたがる人もいますので、許容範囲としていいと思います。
病気の話は暗くなりやすいですし、子供や配偶者の話は、未婚の人もいますので、話題としては避けたいところです。
エピソードによる自己紹介は、その人の人柄が表れていた方がいいので、何か意思決定や、行動が伴うような話を選んでください。できれば、エピソードの中に他の人との関わりが含まれているものが好ましいです。
井口 嘉則
オフィス井口 代表