(※写真はイメージです/PIXTA)

受け取ることのない保険金のために、保険料を払い続ける。基本的には損をするのに、宝くじを購入する…。私たちが時折「経済的には損をするのに、なぜやった?」という非合理的な行動をとってしまうのは、どうしてでしょうか。太宰北斗氏の著書『行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-』(ワニブックス)より一部を抜粋し、そのヒントとなる「行動経済学の代表的なアイデア」を紹介します。

 

<クイズ4>

最後に、前稿で紹介した「サルたちが引っかけられた実験」に類似した問題を試してみましょう。一部のサルをバカにした人、注意してください。

 

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では、次の2つの質問の決定を同時に行なうとします。すべての選択肢に目を通してから、あなたの好きな組み合わせを選んでください。

 

【質問1】次の2つの選択肢のうち、あなたの好きなほうを選んでください。

A…確実に240万円もらえる

B…25%の確率で1000万円もらえるが、75%の確率で何ももらえない

 

【質問2】次の2つの選択肢のうち、あなたの好きなほうを選んでください。

C…確実に750万円を支払う

D…75%の確率で1000万円を支払い、25%の確率で何も支払わない

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さて、みなさんの回答はどうでしょう? おそらく一番人気はAとDの組み合わせのはずです。では、前稿のサルたちのときと同じように期待値計算をしてみましょう。

 

質問1では、Aが240万円で、Bが250万円ですから、Aを選ぶと期待値ベースでは10万円を稼げないことになります。

 

質問2ではCがマイナス750万円、Dがマイナス750万円で同額ですので、期待値的にはどちらでもいいはずです。

 

人は単純に賞金の期待値だけで行動を選択してはいません。ですから、2つの質問で確実なほうの選択肢を好んだり、リスクの高い選択肢を好んだりするのも、それ自体は人の好みを表しただけかもしれません。

 

ここでの問題は、質問の構造が変わった途端に、たぶん多くの人が(AとDを選んでいた場合)、明らかに損する選択を選んでしまっていることです。

 

どういうことだか質問をまとめてみましょう。2つの質問に同時に答えるということでしたから、あなたに突きつけられていた質問は、主には次の通りであったはずです。

 

●A&D…75%の確率で760万円支払い、25%の確率で240万円もらえる

●B&C…75%の確率で750万円支払い、25%の確率で250万円もらえる

 

AとDを選択した人にお聞きします。これならどちらを選びますか?

 

損失の状況も利得の状況も「A&D」より「B&C」のほうが有利な条件となっていますから、AとDを選ぶのは明らかに損だと言えます。

 

ここでカーネマン氏が指摘するのは、ヒトが物事を“広いフレーム”で捉えるのではなく“狭いフレーム”で捉えがちだという点です。

 

突きつけられたのは、4つの選択肢のどの組み合わせを選ぶかということでしたから、4パターンすべてを考慮して一番望ましいものを選択しようとするべきです。でも、大体誰もしません。「面倒なのでシステム1にお任せ!」というわけです。

 

つまり、複雑な組み合わせ問題は頭の隅に追いやって、目の前の選択をひとつずつ別々に処理しようとしたのです。

 

このように、選択の全体的な構造に注意せず、目の前に提示された問題の枠組みに応じて情報処理を簡素化させ、判断を歪めてしまうことを「フレーミング」と言います。

 

要は、脳の処理が限界だから「やりやすい流れで処理してしまおう」というわけです。

 

結果、明らかに損する選択を平然としてしまいましたよね? これがフレーミングの問題です。

次ページ「“損を避けた”はずなのに損をする」はよくある話

※本連載は、太宰北斗氏の著書『行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-

行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-

太宰 北斗

ワニブックス

「税抜価格を表示したら売上が上がる!?」 「経済学を学ぶと所得が上がる!?」 「競馬で賭けるなら“本命” “大穴”は外すべき!」 「3割バッターが最終試合を休む理由とは?」etc. “リアルに得する経済学”をおもしろい…

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