「脱・大企業病」へ…組織をクリアにする3つの解決策
では、先に挙げた大企業病の症状を解消するためにどのようなことが必要でしょうか。ひとつずつ考えていきましょう。
1.指示系統の機能不全には「上司が感情で判断しない」システムづくり
項目1からみていきます。
本来、各階層が事実を正確に伝えようとすれば意思決定者へ伝わる内容は最初から最後まで変わらないはずですが、たとえば現場でなんらかのトラブルが発生した場合、その事実を上司に伝えることによって、「問題を起こしてしまっている責任が自分にあることを自ら証明することになるのではないか」とか、「自らの評価が下がってしまうのではないか」と部下が考えてしまうと、事実を捻じ曲げて報告したり、あるいは報告そのものを怠ったりしてしまうのです。
これには2つの原因があります。1つ目は、その部下が上司に気に入られなければならないと考えていることです。上司が気に入らない情報は、加工しなければそのまま報告できないというわけです。2つ目は、情報をどのように扱うべきかを組織内で明確に定めていないことです。社員が正しい情報の重要性を軽視してしまっているのです。
これらを解決するために、まずは、起きている事実を正確に伝えることでしか意思決定者は正しい判断を下せないという前提に、社員全員が立たねばなりません。上司は感情で物事を判断せず、事実の報告をなによりも重視する必要があります。そのうえで、現場で起きている事実を報告し、それを改善する意思決定を上司にしてもらわないと自分たちが責任を果たせず評価が下がる仕組みにすればよいのです。
2.会社全体の利益につながっているか?…派閥主義は「評価制度」を見直す
次は項目2への対処です。これは各セクション自体が問題なのではなく、各セクションを統括する責任者に問題があります。そもそもセクションというのは機能を明確に分けた結果の形態であり、本来機能性に優れているのです。全体最適を実現するための部分最適になっていれば、セクショナリズムに問題はありません。
ここでは、評価制度のなかに「自部署の成績が会社全体の利益につながっているか」という視点を入れるとうまく機能します。いくら自部署の成績がよくとも、それが全体の利益に結びつかないと評価が下がる、ということになれば、組織内で改善しようとする作用が自然と働くはずです。
3.幹部の停滞・無能化には「結果で評価」で解決へ
項目3は、非プロセス主義的な評価制度を導入することで解決を目指します。これは先の2つの問題の解消にも通ずることです。それぞれのポジションに求められる役割を明確化することによって、現ポストでの業務をこなせているかをプロセスではなく結果で評価するのです。
こういうことを述べると、「過去の経歴はどうするのだ」とか「情はないのか」といった声が挙がってきそうですが、そういうことを言っているから大企業病になってしまうのです。
組織が大きくなると、個々の存在が相対的に小さくなり歯車化してしまうことで、個々の働きがファジーになりがちです。そこに大きなムダがあるわけですが、大企業病にかかっている組織で働いている人たちはそのファジーさこそが大企業を支えているとすら思っているのかもしれません。
渡邉 健太
株式会社識学
営業2部 係長/シニアコンサルタント