母、逝去「介護と実家の管理、おつかれ!  さて…」遺産分割を促した兄が妹から受けた〈痛撃の一打〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

郷里の母が亡くなり、きょうだい3人で相続手続きをしようと考えた長兄ですが、母の身の回りのことを引き受けていた妹が、母の資産の情報開示を渋ります。長兄は自身で調査を進めますが、実家不動産はすでに妹名義になっていたことが判明し、愕然。問いただすと、妹は逆ギレしてしまい…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

ひとり暮らしの母親のもと、毎日通っていた妹

今回の相談者は、60代の木村さんです。亡くなった80代の母親の相続の件で相談があるということで、筆者の事務所を訪れました。木村さんは3人きょうだいの長男で、50代の妹と弟がいます。母親が2カ月前に亡くなったため、相続の手続きが必要ですが、妹と関係がこじれ、話が進まないといいます。

 

木村さんの実家は北関東です。木村さんと弟は大学生の頃から実家を離れ、その後は東京で就職し、結婚。自宅も都内に購入しました。妹は結婚するまで実家で暮らしていました。結婚後は、実家と30分程度の距離で暮らしています。

 

木村さんの父親は20年前に亡くなり、母親は10年ほどひとり暮らしをしていましたが、70代後半になって介護認定を受けました。近くの妹が毎日様子を見に行くとはいえ、ひとりにしておくには不安が出てきたというので、その後は地元の介護施設へ入所したそうです。

 

「母が介護施設に入るための保証人は妹が引き受けたため、そのときから預金通帳なども妹が預かるようになりました。私や弟も定期的に母親の様子を見に行き、妹の負担を減らすようにしていましたが、いちばん貢献したのは、妹であることに間違いありません」

「妹が、母の通帳を見せてくれない…」

木村さんの母親は遺言書を残しませんでした。そのため、きょうだいで話し合って財産の分け方を決めなければなりません。妹には、預けていた預金通帳を見せるよう、再三にわたって連絡をしていますが、対応を渋られているといいます。

 

「母親が介護施設に入る前、通帳を見せてもらったことがあるんです。そのときは4000万円の残高がありました。母は父の遺族年金を受け取っていて、2ヵ月ごとに60万円の年金が振り込まれていました。入所先の介護施設は食費を合わせても25万円程度なので、年金だけで足りるね、安心だね、と、きょうだいみんなで話していたのですが…」

 

通帳を見せてもらえなければ、相続手続きも進みません。そのため、まずは預金調査を行うことになりました。

 

また、母親が介護施設に入ってから空き家となっている実家のほうは、建物は築古ですが、敷地は150坪の広さがあり、評価は1500万円ほどです。

 

「母が不在の実家も、妹が管理してくれたため助かっていたのは事実ですが…」

 

預金調査はそれなりの時間がかかりますが、不動産はすぐに確認できます。登記簿を取得して名義を確認したところ、母親が施設に入手書する直前、母親から妹へ贈与されていることが判明しました。木村さんにとっては寝耳に水です。

 

想定外の状況に愕然とした木村さんですが、ほどなく妹から〈母親の財産はすべて自分が相続する、木村さんには放棄してもらいたい〉という文書が送られてきたのです。

 

「こんなことってあるのでしょうか! このまま妹のいいなりでは納得できません!」

 

妹の対応に激怒してしまった木村さんに、筆者と提携先の弁護士は、預金などの明細をオープンにして遺産分割協議をしてはどうかと提案しました。

「遺産分割協議書なんて作らない!」妹、逆ギレ

木村さんは、筆者と弁護士のアドバイス通り、妹に提案したそうですが、妹は耳を傾けるどころか、逆ギレ。「遺産分割協議書なんて作らない! 縁を切る!」と、その後の連絡も拒否するようになったといいます。弟に連絡を取ってみても、どうやら妹と手を結んでいるらしく、「木村さん vs. 妹・弟」という対立の構図となってしまいました。

 

この状況では事態は進展しません。そのため致し方なく、弁護士に依頼して調停を始めるよう提案をしました。

 

木村さんはアドバイス通り、預金の明細を自分で申請して取引履歴を取得するとともに、弁護士に依頼して調停への意思を固めました。

相続問題の解決の現場からアドバイス

相続発生後は、相続人であれば預金の履歴の入手は可能です。今回のように詳細が不明でも、履歴を入手して自ら確認することができます。また、当事者同士の関係悪化などで遺産分割協議ができない場合は、弁護士に依頼し、家庭裁判所の調停を申請することになります。

 

今回、木村さんから経緯を伺っていて、母親の生前から長らくの間、相続人同士のコミュニケーションが不足していたことが、いちばんの問題となっているように思われました。木村さんには木村さんの、妹さんには妹さんの思いがあり、積み重なるものがあったのだと考えられます。最終的に調停にまで至ったということから、その大きさが思われます。

 

きょうだい間の関係悪化を回避するには、日頃より風通しを良くしておくこと、親の状況についても情報共有を行い、だれかに負担が偏る状況を作らないことが重要だといえるでしょう。

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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    株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 
    相続対策専門士

    京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。

    著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。

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    「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

    著者紹介

    連載相続のプロが解説!人生100年時代「生前対策」のアドバイス事例

    本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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