「婚姻を継続し難い重大な事由」の典型例とは
「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、「婚姻関係が破綻し、回復の見込みが全くない状態」をいうものとされているとお伝えしましたが、具体的にはどのような場合に当てはまるのでしょうか。
「婚姻を継続し難い重大な事由」の判断にあたっては、婚姻期間、婚姻期間中の言動、婚姻継続の意思の有無、扶養すべき子の有無、双方の状況など一切の事情が考慮されますので、最終的には裁判所が離婚訴訟で主張・立証された個別具体的な事情を総合的に考慮して判断をします。
もっとも、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められる典型例がありますので、これらをご紹介します。
1つ目は、相手方にも離婚の意思がある場合です。
この場合、当事者双方が離婚をしたいと考えているので、裁判所があえてその夫婦の婚姻関係を継続させる理由はなく、通常、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められます。
2つ目は、別居が長期に及んでいる場合です。
夫婦は一般に、単身赴任など特別の事情がない限り、同居するものとされています。そのことから、長期間にわたり別居が続き、夫婦間にコミュニケーションがない場合には、婚姻関係が破綻し、回復の見込みがないと判断するための積極的な事情となります。
つまり、別居期間が長ければ長いほど、裁判所でも婚姻関係が破綻し、回復の見込みがないと判断しやすくなります。そのため、別居が長期に及んでいることが「婚姻を継続し難い重大な事由」の一事情となるのです。
では、相談者が離婚するにはどうしたらよいのでしょうか。
今までお伝えした内容は、最終的に離婚訴訟で判決まで行った場合のものです。
日本の離婚制度は、訴訟以外にも協議離婚や調停離婚などがあります。協議離婚や調停離婚は必ずしも民法770条1項1号から5号までの理由がなくとも、双方が離婚に合意をすれば成立します。
そのため、相談者の場合には、まず、当事者双方で協議をしたり、家庭裁判所の離婚調停を利用するなどして、離婚に向けた話し合いを進め、訴訟外での解決を目指すことが第一歩になると考えます。