(写真はイメージです/PIXTA)

社内でパワハラが発生した際、従業員が「会社は信用できない」などの理由から労基署へ通報した場合、企業はどうすればよいのでしょうか。今回は、パワハラ相談に対する労基署の対応や、従業員が労基署へ駆けこむ前・後にそれぞれ企業ができる対策について、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が解説します。

トラブルを防ぎたい…企業ができる「4つの対策」

従業員が労基署にパワハラの相談をしたとしても、労基署にできる対応はほとんどありません。

 

しかし、労基署から問い合わせの電話が入るなど、会社として対応する必要が生じる可能性はあるでしょう。また、紛争調整委員会によるあっせんや労働局長による助言・指導などの手続きが開始されれば、さらに対応時間を要してしまいます。

 

では、そもそも従業員が労基署に駆け込むような事態を招かないために、どのような対策を講じればよいのでしょうか?

 

会社が講じておくべき主な対策は、次のとおりです。

 

1.社内にパワハラの相談窓口を設置する

万が一社内でパワハラが生じた場合に備え、社内にパワハラの相談窓口を設置し、社内へ周知しましょう。

 

これは、改正された「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(略称「労働施策総合推進法」、通称「パワハラ防止法」)でも要請されている内容です。

 

社内に相談窓口があることで、パワハラや疑わしい事例が発生した場合に、労基署ではなく、まずは社内の窓口へ相談してもらいやすくなります。

 

また、社内にパワハラの相談窓口を設置することで、会社がパワハラ防止へ取り組む姿勢が伝わるため、パワハラの抑止力としての効果も期待できるでしょう。

 

2.相談者に「不利益な取り扱いをしない旨」を周知する

パワハラの相談窓口を設置したら、パワハラについて相談した人に対して不利な取り扱いをしないよう周知徹底しましょう。これも、先ほど紹介したパワハラ防止法で明記されている内容です。

 

相談者を本人が望まない部署へ配置転換させたり、自宅待機を命じたりするなど不利な取り扱いをした場合には、相談者から配置転換などの無効や損害賠償を請求される可能性があります。

 

3.小さなパワハラ相談へも真摯に対応する

パワハラについて相談を受けたら、たとえ小さな問題に見えた場合であっても、早期に真摯な対応を行いましょう。

 

実際にはパワハラとまではいえない相談内容であったとしても、被害者が苦痛を感じている以上、会社が対処しなければ労基署など外部へ相談に行く可能性が高くなるためです。

 

また、放置してパワハラが悪化したり長期化したりしてしまえば、会社側の責任が重くなってしまいかねません。パワハラに該当しかねない言動を放置することで、社内にパワハラが蔓延して社内の雰囲気が悪化するリスクもあります。

 

4.定期的に「パワハラ研修」を行う

従業員がパワハラを理由に労基署へ駆け込むことを防ぐための最大の対策は、そもそも社内でのパワハラ発生を防ぐことです。

 

パワハラについては、まだまだ誤解も少なくありません。パワハラであるとの自覚がないまま、従業員がパワハラをしてしまうケースもあるかと思います。反対に、パワハラに該当することを恐れるがあまり、必要な指導までを控えてしまうケースもあるでしょう。

 

このような事態を避けるためには、定期的にパワハラ研修を行うなどして、どのような行為がパワハラに該当するのか正しく周知することが有効です。

 

研修講師は社内で募ることも1つの手ですが、可能であれば弁護士など外部の専門家へ依頼することをおすすめします。専門家へ講師を依頼することで、パワハラに関する最新の事例を知ることができるためです。

 

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本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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