労基署から企業に問い合わせが…どうすればいい?
従業員がパワハラを労基署に相談した場合、会社としてはどのように対応すればよいのでしょうか? 主な対応方法は、次のとおりです。
1.早期に弁護士へ相談する
従業員がパワハラを労基署に相談したことがわかった場合には、早期に弁護士へ相談しましょう。先ほど解説したように、労基署が直接パワハラ問題へ介入することは、原則としてありません。
ただし、パワハラに関する相談をきっかけとして残業代不払いなど労働基準法上の問題が発覚すれば、労基署から指導がなされる可能性があります。
また、相談の結果「労基署では慰謝料請求など民事対応ができない」と知った従業員が、その後弁護士への相談など次の手段を講じる可能性もあるでしょう。
対応が後手にまわってしまうと、会社にとって不利な状況となりかねません。そのため、早期に弁護士へ相談したうえで必要な事実確認を行い、その後の対策を練っておくことをおすすめします。
2.労基署には虚偽なく誠実に対応する
従業員がパワハラについて労基署へ相談すると、労基署から会社へ問い合わせが入る場合があります。問い合わせがあった場合には、誠実に事実を回答しましょう。
なお、通常は単なる事実確認であり、会社への処分や指導を前提とするものではありません。また、労基署から慰謝料などを支払うよう要請されることもありません。
その場で労基署へ回答することに不安があれば、弁護士へ対応方法を確認したうえで改めて回答するとよいでしょう。
3.労基署へ相談した従業員へ不利益な取り扱いをしない
従業員がパワハラについて労基署へ相談したことを理由として、その従業員に対して不利益な取り扱いをすることは禁止されています。
不利益な取り扱いとは、たとえば労基署へ相談した従業員を解雇したり、望まない配置転換や出社停止を命じたりすることなどです。
不利な取り扱いをしてしまうと、労働基準法の規定により6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります。
また、相談者から損害賠償請求などがなされる可能性もあるでしょう。
まとめ
労基署は企業の労働基準法違反を監督指導により是正する機関であり、パワハラ問題へ直接介入することはほとんどありません。
しかし、仮にパワハラについて従業員が労基署へ駆け込んだ場合には、企業としてはその事実を重く受け止め、誠実に対応するようにしましょう。
また、あらかじめパワハラ防止策を社内で講じておくことも重要です。
西尾 公伸
Authense法律事務所
弁護士