リモートワークの普及や働き方改革などで、上司と部下のあいだでコミュニケーションがとりづらくなっている昨今、「部下を育てる」ことについて悩んでいる人も多いのではないでしょうか。しかし、部下との関係性は上司の「たった1つ」の意識で変えられると、大学野球日本代表も経験した異色の経営コンサルタント中田仁之氏はいいます。筆者自身の経験から、部下と接する際の心構えをみていきましょう。
上司の成長しようとする姿こそが「最高のお手本」
部下の役に立ちたくて…“無害な上司”の1年後
会社員の頃、こんな上司がいました。その方は決して派手ではなくあまり目立つ存在ではありませんでした。きつく怒るわけでもなく、口数も少ないその上司は、私たち部下の目から見て、失礼ながらただ害のないだけの方でした。
ある時、その方がコーチングの資格試験に合格したと聞きました。自費で数十万円を支払い、1年間コーチングスクールに通って勉強していたそうです。少しでも部下である私たちの役に立ちたくて勉強した、とおっしゃっていました。
そういえば質問が鋭かったな、そういえばよく話を聞いてくれたな、とその上司がこれまで私にしてくださったことを思い出し、この時も衝撃を受けました。
少年野球のコーチ、口数の少ない上司、この2人の共通点はお分かりでしょうか? この2人は、自分以外の誰かのために、自分が成長するのだという姿勢を持っていたのです。
私が企業研修やコンサルティングの場面で「人の成長に関わるのであれば、自分が成長している姿を見せることが大切です」とよくお話するのは、この2つの事例があるからです。
さらに、「自分の成長が自分のためだけでは弱いです。あなたが成長してほしいと願う方のために、あなたが成長しようとしている姿こそが、最高のお手本なのです」と続けます。
コンサルタントの世界も同じです。クライアントの役に立つために学びの歩みを止めない先生、自分の利益のために学ぶ先生、あるいは学ぶ姿勢が見受けられない先生と様々です。
あなたにも、成長してほしいと願ってやまない大切な人がきっといらっしゃると思います。その大切な人のために、あなたが成長しようと頑張っている姿をぜひ見せてあげてください。その背中がきっと勇気を与え、成長を後押ししてくれます。
部下を預かるリーダーとして、学び成長することをやめてはいけません。あなたは部下の育成を助けるために、あなた自身が成長する姿、成長しようとしてもがいている姿を見せることが必要なのです。そうして部下が育ち、チームが強くなっていくのです。
中田 仁之
株式会社S.K.Y.代表取締役
中小企業診断士
株式会社S.K.Y.代表取締役/中小企業診断士
株式会社A.B.United代表取締役
内閣府「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」会員
2025大阪・関西万博共創パートナー
1969年大阪生まれ。
幼少期より野球一筋、関西大学在学時には体育会準硬式野球部に所属、大学選抜メンバーに選出され海外遠征を経験。「JAPAN」のユニフォームに袖を通し、海外で君が代を歌うという経験を持つ。
卒業後、大日本印刷株式会社に入社、コンサルティング営業として20年間活躍後、2012年2月に株式会社S.K.Y.を設立。
「大好きな人に本気の応援を提供する」という企業理念を掲げ、上場企業から個人事業主まで幅広い顧客層を持つ。主な事業は販売促進に関するプロデュース業及び営業力強化・人材育成等のコンサルティング、さらに経営者やリーダー向けのビジネス講座を東京・大阪で主宰、企業からの講演依頼やリーダー育成プロジェクトの開発などの依頼が殺到している。
2020年5月、アスリートのネクストキャリアを支援する「日本営業大学(現Athletes Business United®︎)」という日本初のアスリートに特化した教育機関を設立、元プロ野球選手やJリーガーほかさまざまな競技に取り組む現役選手や引退した元アスリートから大学生まで、のべ300名のアスリートに対しビジネス教育を提供。就職や起業、地方創生や就農など1人ひとりに合ったネクストキャリアをプロデュースしている。
主な著書に、『困った部下が最高の戦力に化けるすごい共感マネジメント』(2018年株式会社ユサブル)。発売直後に重版となりロングセラーに。台湾、中国でも翻訳・出版された。
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