(※写真はイメージです/PIXTA)

「地頭」良さを見極めるために面接でよく使われている方法として「フェルミ推定」があります。回答の巧拙と入社後の活躍度には相関がないことが明らかになりました。人事コンサルタントの曽和利光氏が著書『人材の適切な見極めと獲得を成功させる 採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

「愛読書」を聞くと偏見が入り込むリスク

■指針を遵守しつつ、差別や偏見を抑える

 

「コンプライアンス」という言葉や概念は、日本では2000年代半ばから存在していましたが、採用の現場でも近年使われるようになりました。狭義では「法令遵守」、広義では社会的規範や企業倫理(モラル)を守ることを意味します。

 

この「コンプライアンス」と「採用」の関係については、各都道府県の労働局などが『採用と人権』という指針(ガイドライン)を定めているので、人事担当者なら一度は目を通しておくべきでしょう。『採用と人権』では、差別や偏見につながるもの、例えば出身地や出自、親の職業や思想・信条に関わるものなどを聞いてはならない、と明確に述べられています。

 

さて、『採用と人権』の中には、差別などとは一見関係なさそうな「尊敬する人物や愛読書を聞いてはいけない」という項目があります。一体どういうことでしょうか。

 

例えば、候補者に「新聞は何を読んでいますか」と聞き、「△△新聞を読んでいます」という回答があったとします。新聞は本人ではなく家族が取ると決めているだけなのかもしれません。

 

しかし、面接担当者は面接の場で候補者を見極めるために、できる限り多く情報を得ようとするあまり、回答からなんらかの「思想・信条」に関わるものを(それが偏見でしかなくても)読み取ろうとしてしまいます。“△△新聞ならおそらく××党を支持、宗教は□□教”といった具合です。

 

この延長線上として、「尊敬する人物」や「愛読書」があり、『採用と人権』に示されているのです。公的機関がそのような指針を明記している事実を、まずは知っておくことが必要です。

 

とはいえ、候補者から自己PRの一環として「私の尊敬する人物は〇×で……」と話しはじめたものを、NGとして遮るほどのことではありません。

 

また、出版社の採用活動で「私の愛読書は△△で……」という話が出てくるのは自然なことでしょう。ある戦国武将の名を挙げ、尊敬している理由から自己PRを組み立てる候補者もいます。これらを一概に排除することは、現実的ではありません。

 

要は“自分の偏見による差別的判断を導くな”ということです。

 

アメリカでは、年齢や人種差別の回避を目的として、履歴書に年齢や顔写真を載せることさえ禁止しているケースがあります。

 

「何もそこまで……」と思う人もいるでしょうが、世界的な傾向として、採用においては「能力を見る、それ以外は見ない」という流れがあることは意識しておくべきです。

 

ポイント
•人事担当者は『採用と人権』という指針に目を通しておくべき。
•「尊敬する人物」「愛読書」を聞くと偏見が入り込むリスクがある。
•差別や偏見を排除するという目的でなければ、むやみに排除できるものではない。

 

曽和 利光

株式会社人材研究所 代表取締役社長

 

 

※本連載は、曽和利光氏の著書『採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

採用面接100の法則

採用面接100の法則

曽和 利光

日本能率協会マネジメントセンター

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