ABCマートの「入店時挨拶のルール」
■感動へつなげる一手間はスタッフの接客力
顧客ストレスがほぼゼロになる解決策を作り上げることができたらいよいよ基礎工事も終わり、豪邸を建てるフェーズに突入します。
これまでプロセスを明確にし、ストレスをリスト化し解決策を講じてきました。感動を創造し、リピート率・客単価・成約率を向上させる準備がこれでようやく完成しました。
ここからは店舗で働く従業員の才能をいかんなく発揮して顧客感動を量産していきます。
当たり前のことを当たり前に積み上げながら接客プロセスに一手間を投じていきます。具体的な例を挙げた方がわかりやすいと思いますので、早速入店時挨拶の一手間を紹介します。
「入店時挨拶の一手間」とは、入店時にお客様に胸を向けてアイコンタクトをして笑顔で挨拶をすることです。これはABCマートでも徹底させられていたのですが、接客中でも必ずお客様に体を向けて挨拶をする、というルールがありました。
つい作業をしていると商品を整理しながら「いらっしゃいませ〜」と言ってしまうことってありますよね。もちろん大きな声を出しているので顧客にストレスは与えなくても最高レベルの挨拶とは言い難いですよね。
体をお客様に向けて目を見て挨拶をすることで「歓迎されている」という実感をお客様は得ることができます。
他にも挨拶を「いらっしゃいませ、こんにちは!」から「ご来店ありがとうございます!」に切り替えるという思い切ったのも一手間になります。
これは業種にもよるかもしれませんが、ある大手の空港のテナントで実施された覆面調査の下位店舗で、挨拶を「ご来店ありがとうございます」に切り替えただけで、次の覆面調査でトップ20%の顧客満足度評価をいただいた実績があります。
このように、テストもかねて一手間を実施してみるとよいでしょう。
いらっしゃいませはお客様も聞き飽きているし、店舗スタッフも言い続けて感情を込めにくいです。そこで「ご来店ありがとうございます」に切り替えるだけでお客様は出迎えてくれたというポジティブな反応をしてくれましたし、働くスタッフも「ありがとうございます」というワードを使うことで自然と笑顔になれて接客に力が入ったと言ってもらえました。
使う言葉が変わるだけで成果が出て顧客感動を作ることもできるので色々とためしてみましょう(あなたの店舗が「いらっしゃいませこんにちは」を使っていたらすぐに「ご来店ありがとうございます」に切り替えてみてください。驚くほど店内の雰囲気が変わります)。
店舗スタッフと「どうしたらお客様が喜んでくれるかな?」という発想で話をするだけでも盛り上がりますし、スタッフ達からたくさんの声が出てくることでしょう。
私も企業研修でワークショップをするのですが、「この手法は素晴らしいなぁ」と新しい発見をします。
例えば、車検工場で働くパートさんが「0秒コール」という一手間を見出してスタッフと共有していました。前職がコールセンターのマネジャーということもありお客様が電話をかけて電話音が鳴る前に出る方法があるそうで、それを店舗スタッフと共有していました。
お客様も「えっまだ鳴ってないのに(笑)」と驚かれるそうです。一般的には3コールですが、0コールもあるのかとびっくりしました。
他にも、携帯ショップでお客様に着座していただく際に絶対に横を歩く、という一手間も素晴らしかったです。一般的には先を歩いて椅子を引いて待つという方法を取りますが、あえて横並びで歩くことで「よりゆったりとできてよいのでは?」と意見が出て「素晴らしい!」と思いました。
店舗で働くスタッフは毎日たくさんのお客様と会話をしているので、店長や店舗経営者よりも多くの顧客感情を理解しています。やはり答えは現場にあります、ぜひすぐにでも朝礼や終礼、面談を通してアイデアを集めてみてください。
店舗スタッフを見ていて「なぜ接客業を選んだのか?」と聞くと皆「話をするのが好き、人の役に立つのが好き」と言います。素質が十分にあって店舗で働いているのですから才能を生かした店作りをするのは店長・店舗経営者にとって必須ですよね。
言ったことだけをやればよい、というオペレーション要因の発想ではなく、ともに店を作り上げるパートナーとしてぜひ接してみてください。感動で溢れる店舗を必ず作ることができます。
成田 直人
ジャパンブルーコンサルティング株式会社代表取締役