「次の主力製品」が完成するまで本業では稼げないが…
銀行員さん「買収したとはいえ、さすがにそんなにすぐに新薬は完成しないですよね。」
学生くん「次の看板製品の開発までに売上が急激に落ちたり、資金が底を突いたりしないんですか?」
当然、そんなすぐには主力製品は完成しません。新薬の中でも、がん治療薬は特に時間を要する分野でもあります。なので、「売上が急激に落ちてしまって資金等は底を突かないのか?」という疑問が出てくると思います。
売上が減少して資金が減ってしまうという点について、当然、エーザイは事前に対策を取っていました。その際、どのような資金の動きが見られるのかを今から見ていきましょう。
営業活動によるC/Fとは何かというと、本業でのお金の入りのことを表しています。
図表9でいうならば、2011年から2013年にかけて、本業の収入が減っているということです。主力製品の特許が切れた結果、売上が減ってしまうと同時に、本業でお金が稼げなくなった状態になっています。
一方で、本業で収入が減っているにもかかわらず、FCF(本業によるC/Fと投資によるC/Fを合わせたもの。図表10参照)、いわゆる最終的に企業に入ってくるお金は、実はこの時期に増えているんです。
投資活動によるC/Fを見ると、「本業以外の投資活動でお金を生み出している」ということが読み取れます(図表11)。
本業で入ってこなくなったお金をカバーするために、別のところでお金を生みにいかなければなりません。そのため、自分たちの遊休資産(使わずに持っているだけの資産・いらない土地などの固定資産)を売却したり、持ち合いの株式を売却したりすることによって、現金を調達していたという動きが見えてきます。
「なぜ本業でお金が減っているのに、最終的に企業の手元に残る現金は増えているのか」というと、減った分をカバーするだけの打ち手をとっているからです。資産の売却等で、本業での減少影響をカバーすることに成功しているわけですね。
その他、製薬メーカーによくあるのは、たとえば製品の支払い債務の支払いの期間を長くしたり、売上債権の回収を早くしたりと、資金繰りを意識して現金を調達するというような動きです。ちょうどこの時期のエーザイの営業活動にも同様の動きが見られます。