筋トレ理論の原点「過負荷」と「継続性」
【トレーニングプログラムを作る】
■実はトレーニング理論は二つだけ
筋トレがブームと感じるのは、ネットなどで検索するとさまざまなトレーニング方法や筋肥大の理論、栄養摂取の方法が述べられていることだ。困ったことに、ときにはその方法が真反対のときもある。たとえば少し前までは筋トレといえば「超回復」がいちばん大事といわれてきた。
トレーニング後は筋肉が破壊され減少するが「48時間〜72時間」休息を与えることで筋肉が修復され以前より増強する現象を「超回復」という。このタイミングを狙って再びトレーニングすれば筋肉はさらに強く大きくなる。これは常識だった。
しかし最近では「超回復」は「方法としては正しいが理論的には間違っている」(というのもそもそもややこしい話だが)。確かに、言われてみれば素人でもわかることだが……自転車選手やアイススケートの選手は、毎日練習して休養などとらないのに太ももが異様に筋肥大しているのはなぜかという説明がつかない。
ダイエットでも「糖質制限」か「カロリー制限」か。未だ結論は出ない(これについては詳しく後述)。しかも困ったことに「私の説は絶対に正しい! なぜならばかの有名な『ランセット』『サイエンス』にも論文が掲載され、アメリカ○×大学の実験でも証明されている」などと必ず書いている。
これを最近の流行で「エビデンス」(科学的根拠)などというが、どちらも同じように「エビデンス」を錦の御旗に押し立てて互いに一歩も譲らない。どちらが正しいかなど、これじゃ素人が判断できるわけがない。
で、私は、筋トレについては誰もが納得できて反論できない理論は二つしかないと結論づけた。しかもこれ以外はあまり重要ではない。
・過負荷の原則
あなたがもし還暦を過ぎているなら、子どもの頃に『忍者のトレーニング』を少年漫画で読んで、ワクワクしなかっただろうか。どういう話かというと……。忍者は毎日毎日、麻の苗木を飛んでジャンプ力を鍛える。
最初はほんの10㎝、20㎝の高さだから楽々だ。しかし、麻の木は成長が早く1日経つと前日より少しだけ成長する。毎日これを飛び続けることで忍者はある日、気がつけば身の丈を越え、軒を越え、屋根までジャンプできるようになる。
「過負荷の原則」というが、要は体を強くする(筋肥大であれ、筋力アップであれ)ためには同じ負荷で運動してもただ現状維持にしかならず、少しずつ刺激を上げていかなければいけない。このとき、大事なのは成長に合わせ「少しずつ」(これを漸進性という)適度に過不足なく負荷を上げること。こうやって長時間かけて強化した体力は、トレーニングをやめてもすぐには低下しない。
・継続性の原則
変化は一朝一夕には訪れないから続けないとダメだよ、という当たり前の理屈。トレーニングを続けても効果が出るには最低3ヵ月はかかる。
これは筋肉のタンパク質は通常90日で半分ほど入れ替わるためといわれている。
『筋肉トレーニング百年史』(窪田登著 体育とスポーツ出版社)によれば、紀元前540〜520年頃、イタリア南部の怪力王ミロが子牛を肩に担いでトレーニングしたのが筋トレの始まりとされている。子牛は日ごと少しずつ成長して(過負荷)重くなり、これを日々(継続性)担ぐことで筋力をつけたそうだ。「忍者のトレーニング」古代ギリシャ版だ。
「過負荷」と「継続性」。やはりこの二つがすべての筋トレ理論の原点なのだ。