組織コミットメントを高めるには
こういった施策を通じて組織コミットメントを上げると、社員は組織における自分の存在意義を認識できるようになり、この会社で仕事を続けたいと感じ、規律を自ら順守するようになるのでしょうか。
落合博満さんは著書『采配』に、選手が監督を尊敬し、チームの一員としてよかったと思うのは、「リーグ優勝したときのレギュラーだけ」と書いています。真理を突いた分析だと思います。結果をだせずレギュラー落ちしたメンバーの心境を察すれば理解できますよね。
そうなると、組織コミットメントが高い状態の人というのは「チームが勝ち、その勝利に貢献しそれに対して十分な報酬を得ている人だけ」となるので、組織においては上位2割程度の人間に限られるという話にもなりかねません。では、それ以外の組織コミットメントが低い人は、その組織での存在意義がないのか、簡単に辞めてよいのか、ルールを順守しなくていいのかというと話はまったく違ってきます。
組織内で個人の存在意義を明確にするためには、上司が部下の役割及び責任範囲を明確に設定し、部下の成長を信じ常にややハードルが高い目標設定を行い、その達成を求め続けなければなりません。部下はつらくても常に上司から要求されることで存在意義を認識し、それを達成したときに存在意義の確定がなされ、より存在意義を高めたいという動機付けがなされます。
また、その組織に居続けたいと部下に思わせるためには、リーダーが組織を成長させることで活躍できるポジションを増やしていくこと、社会的に企業のプレゼンスが高まっていることを業績拡大によって示すことが必要です。そして、ルールに関してはその組織にいる限りは誰もが当たり前に守っていなければならないものですので、本人がどう感じていようが、リーダーはそれを徹底して守らせなければなりません。
つまり、これらの「当たり前のリーダーとしての機能」が組織運営において十分機能した結果、組織コミットメントが高まるのです。
上司が注力すべきこと
上司として部下にやってあげられることは限られています。しかし、これまでみてきた点に鑑みれば、上司としての機能を全うすることが、部下の組織コミットメントを向上させることに直結していることがわかります。
上司として部下を成長させ、組織の一員として活躍できるようにしてあげる、つまり「自らの力で糧を得られるようにしてあげること」だけにまずは注力すべきなのです。そうすることで部下の組織コミットメントが強化され、離職防止、モチベーション向上につながっていきます。
羽石 晋
株式会社識学
営業1部 東京営業2課 課長 シニアコンサルタント