頭の中の記憶の「見える化」する
▶(4)リコールライティング
すでに「想起練習」の考え方について説明しました。記憶は、インプットしたままにしていては定着せず、時々頭からアウトプットする「思い出す」という作業をしないと強化されないという内容でした。
記憶が強化されないといいましたが、記憶が強化されるとは、もちろん定着具合のことも指しますが、同時に使える記憶になることも意味します。使える記憶とは、例えば試験などのときに、どんな質問の仕方をされても答えることができるレベルの記憶ということです。ここでは、この想起練習の考え方を取り入れた学習法を紹介します。
方法は至って単純で、まずはペンとノートや紙などを用意します。学習した内容をノートや紙に文章の形で書いていくのですが、まずはテーマを1つ決めます。日本史ならば、「鎌倉文化の特色」のような感じです。このテーマをノートや紙の一番上に書いておきます。そして、テーマの関連事項を文章にしてどんどん書いていきます。
目的は、頭の中の記憶の「見える化」です。
人に理解してもらう必要はないので、きれいな文章を書く必要はありません。テーマに関連すると思えることであれば、何でも思いつくままに書いていきます。
第1のポイントは、とにかく手を止めず書き続けることです。その理由は、先程述べた使える記憶かそうでないかを判別するためです。しばらく考えてから出てくるものは、使える記憶とはいえません。だから、何も浮かばなければ、そのテーマの単語を書き続けるか、「何も浮ばない何も浮ばない」と書き続けてもいいです。そのうち頭に浮かぶものが出てきたら、またそこから連想して続けていけばOKです。
大切なのは、脳の中身を引き出そうとする意識です。反射的に書き出すことができた知識は、頭の中で使える記憶になっている証明になります。何かについて問われたら、時間をかけてやっと思い出せるのではなく、反射的に答えることができるレベルを目標にしてください。
そして、第2のポイントは、ライティングに時間の制限を設けることです。そのために、タイマーも準備してください。1テーマにつきライティングの時間は1分間とします。制限時間を1分間にする理由は、脳は時間を制限されたほうが本気になって働いてくれる性質を持っているからです。それを心理学では、「締め切り効果」とよびます。
1分間のライティングの評価基準は、1分間手を止めずに書き続けることができ、しかも、制限時間が終了したあとも書き続けることができる手応えを感じることができるかです。これができれば合格といえ、学習内容の記憶レベルが高いことを示しています。1分間書き続けることはできたけれど、途切れ途切れだった場合は、まだ記憶にあいまいなところがあるという証拠です。
合格レベルのライティングができなかった場合には、その項目は復習が必要ということです。その復習は、できればライティングの直後にしましょう。そして復習後、もう一度だけその項目について集中して1分間ライティングを行ってください。このサイクルで、知識は使える記憶に変身します。
池田 義博
記憶力日本選手権大会最多優勝者(6回)
世界記憶力グランドマスター
↓コチラも読まれています
ハーバード大学が運用で大成功!「オルタナティブ投資」は何が凄いのか
富裕層向け「J-ARC」新築RC造マンションが高い資産価値を維持する理由