考え方は対話によって変えられる
それ以来、数週間にわたって、ソフィーは間違いを話題にしました。ある日はおどけた調子で。ある日はやや真面目に。私とフィリップも同じことをしました。すると、ソフィーの姿勢が変わり始めました。先生によると、前よりも自分の間違いを認められるようになったし、友達も増えた、とのことでした。
このときの会話を振り返ると、心理学者のキャロル・ドゥエックが「しなやかマインドセット」と呼ぶ思考を思い出します。しなやかマインドセットとは、「知性は伸ばせる」という考え方です。しなやかマインドセットの子どもは、努力によって成長できると考えています。
とはいえ、生まれつきの素質や特定の分野の才能は存在しない、という意味ではありません。当然、才能は存在します。しかし、親や教師、友達の助言、さらに、努力が影響します。
ドゥエックは、マインドセットについて書いた著書の中で、「まだ」という言葉を使うよう勧めています。たとえば、「私は掛け算のやり方を習得していない――今はまだ」と言うのです。スキルは伸ばせるし、間違いは成長の余地を示すサインにすぎません。
「しなやかマインドセット」の概念は一気に普及し、今ではキャッチフレーズのようになっています。確かにこの考え方は重要です。ドゥエックの発見によると、子どもはたった3歳半で「硬直マインドセット」に陥る可能性があります。硬直マインドセットの子どもは、間違いが自分の人格を表していると考えます。3歳の息子・ポールもこう言ったことがあります。「どうせぼくはレゴ下手なんだ」。ソフィーがもっと凝った作品を組み立てているのを見て、自分には才能がないと思ったのです。
しかし、この考え方は対話によって変えられます。子どもが何歳であっても遅くはありません。テキサス大学教授のデイビッド・イエーガーが明らかにしたように、硬直マインドセットのティーンエイジャーも、会話によってしなやかマインドセットになれるし、やる気と成績までも上げられます。
というのも、イエーガーが1万8000人以上の高校1年生を対象に調査したところ、しなやかマインドセットの講習会に参加した生徒は、挑戦に積極的になりました。会話が行動につながり、子どもは間違いをいとわずに自ら背伸びをするようになった、というわけです。