(※写真はイメージです/PIXTA)

学習力、共感力、創造力、自己肯定感、人格…これらはすべて「日々の会話」で磨かれます。わが子から「困った質問」をされたときこそ、わが子の学習力を育てるチャンス。レベッカ・ローランド氏の著書『自分でできる子に育つ 最高の言葉かけ』(SBクリエイティブ、木村千里訳)より、「学びを育む会話」を見ていきましょう。

子どもとの会話は、親が関心と好奇心を示すことが重要

最高の親子の会話とは、「自分なら知的な困難に立ち向かえる」と子どもに思わせる会話です。とにもかくにも親が関心と好奇心を示すことが、その強力なきっかけとなります。

 

まさにそれを実感する出来事が、先日わが家でありました。ある晩のことです。3歳の息子・ポールが窓台によじ登って、「アライグマはどこ?」と尋ねました。最近わかったのですが、わが家の外にある木にはアライグマが住み着いていました。

 

「見えないけど、アライグマはきっと起きてるよ」と夫のフィリップが言いました。「ぼくは今から寝るでしょ。アライグマも寝る時間だよ」とポールは主張しました。

 

「アライグマは、ポールが寝ている間に遊んで、ポールが起きている間に寝るのよ」

 

「疲れるの?」ポールはいぶかしげに尋ねました。

 

「そうよ…でもポールとは違う時間に疲れるの。いつだと思う?」

 

「明るい時間」ポールは窓のところへ行きました。「起きてよ、アライグマさん! アライグマさんの起きる時間だよ!」

 

この何気ない会話から、「動物によっては昼夜が逆転することもある、人間のスケジュールは普遍的なものではない」とポールは理解しました。「夜行性」のような難しい言葉で説明することもできましたが、その必要はありませんでした。ポールはポールなりにその概念をつかみました。難しい言葉はいずれ、自然なタイミングで、導入すべきときに導入すればいいのです。

「親自身も答えを知らない質問」を会話のタネにする

子どもが何かを見つけたときにも同じことが言えます。観察によって子どもが気づいたこと、指摘したことから会話を始めれば、子どもの関心を認めたことになり、それについて様々なアイデアを探らせてやれます。たとえば「どうしてアリは列になって歩くの?」と聞かれたら、「どうして昆虫はリーダーについていくんだろうね? 人間の場合はどうかな?」といった言い方で、昆虫と哺乳類の習性の違いに話をつなげてみてはどうでしょうか。

 

小さな疑問は大きなアイデアへの入り口になります。既存の知識を詳しく説明すると、さらなる疑問が浮かび、もっと知りたくなるのです。それが基礎となり、一生学び続ける子どもが育ちます。世の中には学ぶべき面白いことがあるとわかっていて、それを学びたいと思うようになります。

 

そのためには、あなたにとって難しい質問、答えを知らない質問をするとよいでしょう。会話に身が入り、交流が豊かになります。たとえば「ドイツの首都は?」と「最初の国はどうやって始まったの?」という疑問を比べてみましょう。あるいは「あの星座の名前は?」と「ほとんどの星はなぜ夜にならないと見えないの?」を比べてください。

 

どちらの例も、前者は答えがわかっているか、答えがすぐに見つかる質問です。しかし、後者の答えは単純ではありません。あなた自身が真剣に考える必要があります。

 

誤解のないように言うと、首都を学ぶことが良くないとか、簡単な質問より難しい質問が良いという意味ではありません。何事もバランスが大事です。しかし、私たちは、答えの明らかな疑問ばかりを重視し、もっと複雑な疑問やはっきりと答えられない疑問を取り上げない傾向があります。

 

その傾向を変えるために、子どもとともに探る意識を持ちましょう。あなた自身のアイデアや疑問を声にしましょう。子どもの発する質問をきちんと取り上げましょう。そうやって会話を切り出したら、一歩下がります。子どもが言いたいことを確認してください。大人の知らないことや、まだ解明されていないことがあると知ることは、子どもにとって嬉しいものです。

 

とはいえ、即答で終わらせず、徹底的に話し合うエネルギーがあなたに常にあるわけではないでしょう。また、大人同士で話しているときに子どもから質問されたりしても、相手をする時間はないかもしれません。そのような場合は、「話してはいけない」タイミングを覚えてもらうチャンスです!

 

それでも、タイミングさえ悪くなければ、明確な答えのない疑問について話し合うことは、とても重要です。それを繰り返すことが習慣作りであり、後々の子どもの習慣へとつながるのです。

「理由と原因を探ること」が日々の学びになる

根本的に、こうした習慣を通して子どもは世界を理解します。子どもは生まれながらにして学習意欲を持っていて、幼いころから学びたがります。同じ質問を何回もされると(子どもは1日に最低でも93個の質問をすることが研究で明らかになっています)、うるさく感じるかもしれませんが、子どもはたいてい「疑問の虫」のムズムズをかきむしろうとしているのです。そして納得のいく説明が得られないと、倍の確率で同じ質問を繰り返します。疑問の話題はあちこちへ、一見不規則に飛ぶ傾向があります。

 

実際、娘のソフィーも7歳のとき、こう尋ねました。「質問が3つあるの。『止まる』っていう言葉は誰が作ったの? なぜ星があるの? 寝ているとき頭の中で何が起きているの?」

 

私たちは、質問の答えを知っていないといけないと思いがちです。子どもの聞きたがる質問のほとんどは、私たち自身に関する質問ではないのに、私たちはそれを「自分事」としてとらえ、正確な答え方がわからないと困ったり、答えようがないと感じるとイライラしたりします。でも本当は、もっとずっとシンプルで楽しい会話ができるはずです。

 

「答えは知らないけど、私はこう思う。あなたはどう思う?」と言えばいいのです。その後、なぜそう思うのかを付け加えましょう。あなたが自分の思考プロセスを説明することで、子どもはそれを手本にして、物事を考え抜く方法を学びます。また、すべてを知っている必要はないと知り、安心します。

 

たとえ相手が幼い子どもでも、「因果関係の説明と質問」は子どものためになります。因果関係の説明と質問とは要するに、「どうして、どんな作りで動くのか(仕組み)」「なぜそうなるのか(原因)」を考えることです。この種の疑問は、子どもが2歳であれ13歳であれ、世界を探求し理解する助けになります。

 

「なぜ(why)」「どうして(how)」を子どもに問うと同時に、子どもが発する疑問にも丁寧に答えましょう。さきほどの例のように、睡眠中の脳の仕組みについて聞かれたら、「脳は停止しているんじゃないかしら」と答えることもできます。

 

でも、夢を見ているときはどうでしょうか? 脳の働き方が変化するのでしょうか? あなたの知っていることを伝えましょう。たとえば、夢には1日の情報を処理する働きがあると聞いたことがあるかもしれません。まったく見当がつかないなら、正直にそう伝え、インターネットで「睡眠中の脳」と検索するなり、眠りに落ちるときの感覚について子どもに尋ねるなりしてみてください。夢を覚えているか、聞いてみるのもよいでしょう。答えに自信がなくても、あなたの考えを丁寧に話してください。「停止しているわけじゃないと思う。でも、動きがにぶくなるのかも」といった答え方ができるかもしれません。

子ども自身に質問を探らせ、考えさせるには?会話の例

質問に正直に向き合い、その質問をきっかけに会話をすることで、あなたと子どもの絆は深まります。子どもの「コントロールされている感」は薄れ、「きちんと反応してもらえている感」が強まります。まずは日常の交流から実践してみましょう。質問に背を向けるのではなく、質問を掘り下げてください。

 

たとえば、雲が出てきたことに、あなたの4歳の息子が気づいたとします。「雲が出てきたけど、どうなると思う?」とあなたが尋ねると、「雨か雪になる」という答えが返ってきました。息子の考えを発展させましょう。

 

仮に、気温が12度だとします。息子は雨と雪、どっちになると予測するでしょうか? その理由は? 暖かい日に吹雪を見たことがあるのでしょうか? 子どもの好奇心の波に乗ってください。可能であれば、あなた自身も好奇心を絶やさないでください。あなたの熱意と好奇心は子どもに伝染します。

 

これは、未就学児にも就学児にも当てはまります。例を2つ挙げましょう。次ページの図表1は未就学児の例で、図表2は就学児の例です。

 

出所:レベッカ・ローランド著『自分でできる子に育つ 最高の言葉かけ』(SBクリエイティブ、木村千里訳)
[図表1]小さな変化を起こす:「深堀り」の例①(未就学児の例) 出所:レベッカ・ローランド著『自分でできる子に育つ 最高の言葉かけ』(SBクリエイティブ、木村千里訳)

 

出所:レベッカ・ローランド著『自分でできる子に育つ 最高の言葉かけ』(SBクリエイティブ、木村千里訳)
[図表2]小さな変化を起こす:「深堀り」の例②(就学児の例) 出所:レベッカ・ローランド著『自分でできる子に育つ 最高の言葉かけ』(SBクリエイティブ、木村千里訳)

 

どちらの例も、親はすべてを知っているわけではありません。完璧な答えは持ち合わせていません。ただ、質問を、探るチャンスととらえています。会話を誘い水にして、子どもにふだんとは違う背伸びをさせています。つまり、「誰にでも疑問があること」「知らないことは恥ずかしいことではなく、チャンスになること」を教えたのです。

 

取り組むアイデアや疑問は、大きい子でも小さい子でもたいして変える必要はありません。変えるべきなのは、表現の抽象度と言葉遣いだけです。

 

例として、重力のような壮大な概念について考えてみましょう。3、4歳の子どもでも、基礎的なレベルであれば重力について話し合えます。「物が必ず下に落ちて、上には行かないのはなぜだろうね?」といった具合にです。

 

大きな子どもであれば、「もし重力がもっと弱かったら、どうなるんだろうね? 物が浮いたり、空に昇って行ったりするのかな?」といった聞き方ができるでしょう。あるいは「なぜ物によって地面に落下するまでの時間が違うんだろうね?」のように、もっとひねりを利かせることもできます。子どもが会話をどう解釈しているか、定期的に確認してください。

 

子どもの解釈がずれているかどうか想像することはできますが、やはり尋ねてみなければ本当のところはわかりません。

 

 

レベッカ・ローランド

音声言語病理学者。ハーバード大学教育大学院講師、ハーバード大学医学大学院教員、ボストン小児病院神経内科に所属する言語療法の専門家。

言語聴覚士の国家資格を有し、幼児から高校生までの子どもを対象に、教育現場でカウンセリングや学習補助をしている。発話言語や読み書き障害、および子どものコミュニケーション能力の発達について研究し、教師の専門性向上に取り組んできたほか、アメリカの新聞や雑誌などさまざまな媒体で教育や子育てに関する記事を寄稿している。

※本連載は、レベッカ・ローランド氏の著書『ハーバード大学教育学博士×発達支援専門の言語学者が教える 自分でできる子に育つ 最高の言葉かけ』(SBクリエイティブ)より一部を抜粋し、再編集したものです。

ハーバード大学教育学博士×発達支援専門の言語学者が教える 自分でできる子に育つ 最高の言葉かけ

ハーバード大学教育学博士×発達支援専門の言語学者が教える 自分でできる子に育つ 最高の言葉かけ

レベッカ・ローランド 著
木村 千里 訳

SBクリエイティブ

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