子どもが間違いを通して学ぶためには?
子どもが間違いを受け入れられるようにするには、どうしたらよいのでしょうか? その重要なヒントが、ドゥエックの近年の研究にあります。ドゥエックが発見したとおり、しなやかマインドセットの親でも、子どもの失敗や間違いを知ったときに、子どもの能力の伸び代を否定するような反応をしているかもしれません。子どもを心配して、すかさず「別にうまくなくたっていいんだよ」となぐさめていたら、「うまくなんかなれないよ」という意味に受け取られる可能性があります。
ドゥエックによると、そうならないためには、子どもが成功したときには、効果的だった策や、問題を解決した努力を褒めるべきです。逆に子どもが間違えたら、間違いを情報として活用する姿勢を見せましょう。間違いから何が学べるか、自分に問いかけましょう。
私がソフィーの例で実感したように、「間違いに関する会話」は、学びに大きく影響します。間違いについて話すうちに、子どもは間違いを気に病まなくなります。私たちが間違いをおおらかに受け止めれば、子どもは安心して間違いの原因を見つけようとします。そして、次はうまくいくよう対策を立てます。
共感性も養われます。男の子とぶつかってしまったと話したとき、ソフィーはその子の感じ方に気づけました。こうして、子どもは共感性と、「完璧でなくてもいい」という安心感の両方を手に入れます。親とお互いに間違いを話すうちに、自分は―そして親も―常に学びの旅路にいるのだとわかるようになります。等身大の自分を受け止められる基礎があるので、好奇心や積極性を失いません。そして同じぐらい重要なことですが、旅の見どころ、つまり、うまくいった部分に気づきやすくなります。
とはいえ、「間違いに関する会話」は、学びを促進する数ある会話の一例にすぎません。重要なのは、話す内容より話し方です。実は、子どもは日常のあらゆる話題から学びの現在地を確認できるし、自分と世界に対する理解を深められます。
ですから、上質な会話さえ提供できれば、子どもは誤った思い込みに気づき、それを修正するための行動を取るでしょう。また、私たち親も子どもの考えを知り、子どもを次のレベルへと引き上げてやれます。上質な会話によって関心を追うことを後押しされた子どもは、芽生えた情熱を追求し、最高にうまくいけば、その情熱を日常生活に取り入れるようになるのです。
もっとも、思い込みを長期的に変えるのは、一朝一夕にできることではありません。それでも、それは時とともに変わる対話のなかで、ふとした瞬間に訪れます。子どもが間違いを受け止められるように助けることは、そこにたどり着くための出発点にすぎません。
学びを促進する主な会話の方法を2つ明かします。1つめは、生涯続く好奇心に火をつけ、子どもが手探りで考え、未知の問題に取り組めるように促す方法です。2つめは、学び方を学ぶよう支援する方法です。自分の思考について思考する、「メタ認知」と呼ばれるスキルが、戦略的な学びの鍵です。言い換えれば、「もっとたくさんの事実を詰め込もう」「もっと勉強の時間を増やそう」とがむしゃらにがんばるのではなく、効果的な学び方を知ることです。メタ認知が優れている子どもは学業で成功するし、何より知識欲旺盛(おうせい)で、自分の能力を楽観できる、生涯学び続ける子どもに育ちます。
レベッカ・ローランド
音声言語病理学者。ハーバード大学教育大学院講師、ハーバード大学医学大学院教員、ボストン小児病院神経内科に所属する言語療法の専門家。
言語聴覚士の国家資格を有し、幼児から高校生までの子どもを対象に、教育現場でカウンセリングや学習補助をしている。発話言語や読み書き障害、および子どものコミュニケーション能力の発達について研究し、教師の専門性向上に取り組んできたほか、アメリカの新聞や雑誌などさまざまな媒体で教育や子育てに関する記事を寄稿している。