(※写真はイメージです/PIXTA)

中国の日本への浸透、とくに政界への浸透は憂慮すべき状況になっています。与野党を問わず多くの議員が、中国から便宜供与を受け、中国の意のままに発言し行動しているケースが多いといいます。元・陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏が著書『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)で解説します。

日本の政界への浸透は憂慮すべき状況

■統一戦線工作や影響工作の実態を知り効果的に対処せよ

 

オーストラリアのクライブ・ハミルトン教授は、その著書『Silent Invasion』の日本語版で以下のような驚くべき事実を記述している。

 

〈北京の世界戦略における第一の狙いは、アメリカの持つ同盟関係の解体である。その意味において、日本とオーストラリアは、インド太平洋地域における最高のターゲットとなる。北京は日本をアメリカから引き離すためにあらゆる手段を使っている。北京は、日米同盟を決定的に弱体化させなければ日本を支配できないことをよく知っている。

 

主に中国が使っている最大の武器は、貿易と投資だ。すでに日本には、北京の機嫌を損なわないようにすることが唯一の目的となった財界の強力な権益が存在する。中国共産党率いる中国との貿易と投資に関する協定が日本にとって「毒杯」となりうる理由は、まさにここにある。〉

 

〈日本では、数千人にものぼる中国共産党のエージェントが活動している。彼らはスパイ活動や影響工作、そして統一戦線活動に従事しており、日本の政府機関の独立性を損ね、北京が地域を支配するために行っている工作に対抗する力を弱めようとしているのだ。

 

その一例として、人民解放軍の外国語学校の卒業生が、長年にわたって日本で貿易会社を隠れ蓑として運営しているケースがある。彼は日本国内で、人民解放軍の士官学校出身者で構成される広範なネットワークに所属しており、中国共産党の海外工作機関と秘密裏に連絡をとりあっている。彼は徐々に、影響力を持つビジネスマンや保守的な政治家たちとのコネづくりを進めており、ビジネスマンや芸術家、ジャーナリスト、そして役人などを中国に訪問させて「中国の友」となるように育てるのだ。

 

すると彼らは次第に「中国の視点」から世界を見るようになり、日本に帰国すると公私にわたって「両国は密接な関係をつくるべきであり、北京を怒らせるようなことは何であっても日本の利益にならない」と主張し始める。〉

 

ハミルトン教授は以上のように、中国の日本での工作を的確に記述し、日本人に警告している。また、ハミルトン教授の情報提供者である陳用林(在シドニー中国領事館の政務一等書記官であったがオーストラリアに政治亡命した)は、「中国共産党は、実質的に決定された戦略計画に沿った形で、オーストラリアに浸透するための構造的な試みを、すでに体系的な形で開始した」という衝撃的な証言をしている。

 

この証言の「オーストラリア」の代わりに「日本」を挿入すると、中国の日本への体系的な浸透が進行中であることがわかる。私が本連載において試みているのは、まさに「中国の日本への体系的な侵略」を明らかにし、警告することである。

 

中国の日本への浸透、とくに政界への浸透は憂慮すべき状況になっている。与野党を問わず多くの議員が、中国から便宜供与を受け、中国の意のままに発言し行動しているケースが数多くみられる。これらの親中派を取り締まる法的措置が求められている。

 

オーストラリア上下両院は、外国の利益を代弁しておこなう政治活動には事前の届け出を義務付けるなど、外国による不当な内政干渉を受けにくくする法案を可決している。また、外国からの影響を排除するために、外国からの献金を禁止した。さらに、二重国籍の国会議員は憲法違反であり、該当する議員は辞職していった。
 

 

渡部 悦和
前・富士通システム統合研究所安全保障研究所長
元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー
元陸上自衛隊東部方面総監

 

 

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本連載は渡部悦和氏の著書『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)より一部を抜粋し、再編集したものです。

日本はすでに戦時下にある

日本はすでに戦時下にある

渡部 悦和

ワニブックス

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