(※写真はイメージです/PIXTA)

投票用紙に書きたい候補がいない場合、「該当者なし」は無効票などとして扱うのではなく、該当者なしの新たな項目として結果を公表するのです。投票率は上がるかもしれません。ジャーナリストの岡田豊氏が著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社、2022年2月刊)で解説します。

「国民審査」でクビになる裁判官はいない

■裁判官は現場の人間を見つめているか

 

衆議院選挙の際に実施される「国民審査」の用紙に、「×印」をつけたことがありますか。

 

国民審査とは、最高裁判所の裁判官の罷免ができる制度で、「×印」が有効票数の過半数となった場合、その裁判官は罷免されます。つまりクビです。なかなか過半数には届かないので、そう簡単にやめさせられる仕組みではありません。

 

一部の新聞は国民審査の判断の材料提供のために、投票日前に、どの裁判官が、どの裁判で、どんな判決を出してきたかを記事にしています。これはメディアの大事な責務だと思います。

 

そもそも、毎日のようにニュースになっている裁判では、裁判官や裁判長の名前はしっかり報道すべきであり、読者や視聴者はその名前をしっかり記憶しておくべきです。

 

なぜか。裁判官の力は絶大で、その判断は社会に大きな影響を及ぼすからです。閣僚や国会議員、中央官庁の幹部、自治体の首長などが持つパワーと簡単には比較できませんが、結果として、社会に大きな影響力を行使しています。

 

裁判官は、判決を出す人の人生を直接左右するほか、社会の仕組みなどをあらゆる場面で方向づけます。しかし、裁判官は判決ごとに詳しく記者会見などしないので、判断の過程や理由、本音が分かりにくいうえに、目立ちません。

 

裁判官の顔や思考が見えず、ある意味、不透明だと私は感じています。それゆえ、国民は、その判決を出した裁判官の名前と判決内容をしっかりチェック、監視しておく必要があるのです。

 

裁判員裁判の導入で、裁判官の意識も変わったと思います。裁判官のみなさんにお願いしたいのは、過去の判例を鵜呑みにせず、デスクワークに終始せず、現場に出て、様々な経験をして、泣いて、笑って、怒って、人間と社会を、自分の心で見つめていただきたいということです。つまり、自考してほしいのです。

 

2014年3月、埼玉県川口市で起きた17歳の少年による祖父母殺害事件。借金があった母親が少年に「殺してでも借りてこい」と指示したといいます。不幸な幼少期だったことなども踏まえ、検察は死刑ではなく、無期懲役を求刑。その年の12月、さいたま地裁(栗原正史裁判長)は懲役15年の判決を言い渡しました。

 

産経新聞によれば、判決後、栗原裁判長は少年に次のように説諭したそうです。

 

「お母さんにも原因はあるかもしれないが、君の責任はなくならない。ひと2人が亡くなったことの意味を一生考えてほしい」
「君が刑期を終えて社会に戻ってくるのを、君を思ってくれている人たちと一緒に、私たちも待っていようと思います」

 

裁判長自らも待っている、と呼びかけた栗原さんの言葉は話題になりました。

 

また、栗原裁判長は、被害者遺族として検察側の証人に立った少年の母の姉に対して、「決してあなたを非難しているわけではないが、周囲にこれだけ大人がそろっていて、誰か少年を助けられなかったのか」と問いかけたそうです。

 

法廷で裁判官が、自らの思い、感情をどこまで投げかけていいのか、賛否があるかもしれません。でも、栗原さんは、少年のことを自分の頭と自分の心で自考し、判決を本気で出そうとしたのではないでしょうか。少年を殺人犯に追いやった背景に、「社会」の責任もあるとすれば、栗原さんはその「社会」の中に自らをも含めて考えたのかもしれません。

 

さいたま地裁で裁判員裁判を担当していた栗原さんは、ある裁判員の言葉に影響を受けました。朝日新聞によれば、ある事件の協議中、栗原さんは裁判員から次のように指摘されました。

 

「裁判官って、被告を呼び捨てにするんですね。普通、社会でそんなことってないですよね」

 

それまで栗原さんの目には「被告は裁かれる対象にすぎない異分子」と映っていたそうです。しかし、その裁判員は、被告を同じ社会にいる構成員、いわば“仲間”と捉えていました。

 

栗原さんは、それから、被告に「さん」を付けて呼び、丁寧語で語りかけるようになったそうです。やり方を変えたのです。上から見下されるのではなく、「さん」付けで呼ばれ、丁寧な言葉で語りかけられた被告は、何を感じるのでしょうか。

 

同じ目線に立とうとする裁判官の言葉は、被告の心に響くのかもしれません。

 

岡田 豊
ジャーナリスト

 


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本連載は、岡田豊氏の著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社、2022年2月刊)より一部を抜粋し、再編集したものです。

自考

自考

岡田 豊

プレジデント社

アメリカでの勤務を終えて帰国した時、著者は日本は実に息苦しい社会だと気付いたという。人をはかるモノサシ、価値観、基準の数があまりにも少ない。自殺する人があまりにも多い。笑っている人が少ない。他人を妬む。他人を排…

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