GAFAMも「人材採用戦略」を最優先している
多くの中小企業やベンチャー企業で、採用活動が素人任せになり、かつ感覚的で属人的で暗黙的になってしまうのは、そもそも経営者も含めた採用に関わる人たちが「採用活動の重要性」を認識しながらも、最重要テーマと位置づけていないからです。永続的な企業の発展を実現するための最初の入り口となるのは「採用」です。要するに「誰を船に乗せるか」で会社のすべてが決まるのです。
中小企業やベンチャー企業は、大手企業のような大量採用で「とりあえず雇ってから育てる」という方法はとれません。むしろ、自分から機会を創造し、仕事を掴つかみにいけるような優秀な人材を採らないとゴーイング・コンサーンのループを回せないのです。そして、日本の中小・ベンチャー企業は、新卒採用に力を入れたほうが、そういった人材を集めることができ、さらに数年後には、彼らが経営幹部となって活躍し会社を大きく成長させてくれることでしょう。
会社は「そこで働いている人の総力」までしか成長することができません。そのことがわかっているGAFAM(Google・Amazon・Meta〈Facebook〉・Apple・Microsoft)などは、人材採用戦略を最も上位のこととして考え、あらゆるところからいい人材を引き抜く活動をしています。
結果、彼らは現在でも世界のトップ企業として君臨し、他の追随を許さないほどの成長を見せていることはご存じの通りかと思います。それほどまでに重要な人材採用を、決して感覚的で属人的で暗黙的な仕事にしてはいけない、と私は考えています。
求める人材が食い違う「現場・人事・経営陣」
ここまで、多くの中小企業やベンチャー企業で人材採用が上手くいかない要因をお伝えしてきましたが、次のステップへ進む前に、採用活動において社内で生まれるストレスの回避策についてもお伝えします。
私が、コンサルタント時代に採用担当者からよく聞かされた愚痴は、次の2つでした。
「私はいいと思って役員面接・社長面接に上げても、OKにならないんです」
「せっかくいい人材を採用しても、現場で上手く育てられず定着しないんです」
この愚痴から、採用活動にはびこる重要な問題に気づくことができます。それは、各レイヤー(層)での「求める人材の食い違い」です。
採用活動を考えるとき、会社の各層ではそれぞれ考えることが異なります。例えば、人事部(採用担当者も含む)でいえば、「入社人数」を満たせるかどうかを考えます。10人を入社させるのがミッションだとすれば、10人の頭数を揃えることで評価は100点。1人でも欠けると評価が下がります。
しかし、経営陣からすると頭数だけ揃えるのではなく、入社させた10人全員が活躍してくれることを願って採用活動を指示します。重要な関心事は、「自社で活躍してくれる人材」が入社してくれるかどうかです。
次に、現場で働く人からすれば「現場でマネジメントしやすい人材」を求めます。数だけ揃えられても、仮に優秀だとしても、自社のカルチャーにそぐわない人材を入れられても苦労するだけです。
このように、それぞれの層で考えることが違うにもかかわらず、経営陣、人事、現場が一体となって採用活動をする会社は少なく、採用担当に任命された人や部門だけがやるものだと考えてしまっているのです。本当に欲しい人材を採用しようと思うなら、それぞれの見る目を合わせ、一丸となって取り組む必要があるのです。
そうでないと、人事部は自分たちの目標数字を達成するために、多少の妥協をしてでも“入ってくれる人材”を揃えます。しかし、経営陣はその人材たちが「活躍しそうか」の目線で見るので、簡単にはOKを出しません。
すると、経営陣と人事部の間で
「人事部は良いと思っているのに、どうして経営陣はOKを出さないのか?」
「どうして人事部は経営陣の求める人材を選考しないのか?」
という食い違いが起きてしまいます。
企業によっては、人事部から経営陣に対して「どのような人材が欲しいのか?」ということをヒアリングすることもあるでしょうが、経営陣はそれを言語化するのが難しいため、結局この溝は解消されず、人事部が頭を抱えることになります。
ほかにも、人事部と経営陣が内定を出した人材であっても、実際に現場に配属してみると、カルチャーが合わず、うまく教育ができなかったり、成果を出せなかったりすることもよくあります。最終的に離職が発生すると、「なんでこんなうちに合わない人材を採用したんだ。人事部は何を考えているんだ」「数合わせだけしたって意味がない。経営陣はわかっていないのか」と、現場は人事部や経営陣のせいにしてしまいます。自分たちが採用に関わっていないがゆえに、無責任にいいたい放題の状態になってしまうのです。
近藤 悦康
株式会社Legaseed
代表取締役CEO