成績優秀な営業マンが突然入院した結果…「どこの企業にも起こりうる悲劇」とは?

成績優秀な営業マンが突然入院した結果…「どこの企業にも起こりうる悲劇」とは?
(写真はイメージです/PIXTA)

情報を統合的に各ツールに使用していく連携ができる「業務統合システム」。企業はこのシステムを利用し、DXを推進することで業務効率化や売上利益拡大を見込めます。今回は、この業務統合システムを導入していたのにもかかわらず、成績優秀な営業マンが突然入院した結果、悲劇に陥った事例を中心にみていきます。

 

成績優秀な営業マンが突然の入院…

ある中小建設業の企業に勤める営業のAさんは、営業成績こそ大変優秀でしたが、パソコンが得意ではなく、どちらかというと手帳にメモをするアナログ派でした。顧客情報やアポイント情報など、手帳に書き込んでは、行動したタスクに線を引いて進捗を管理するというやり方です。

 

あるとき、Aさんが突如、急病で入院することになりました。入院は致し方ないとしても、業務をストップするわけにはいかない会社側は、臨時の営業担当として、Aさんの業務の一部を他の営業担当に振り分けました。

 

問題はここからでした。Aさんから、口頭でそれぞれの引継ぎ内容を聞いた各営業担当でしたが、Aさんの体調もあいまって細かいことまで聞くことができていませんでした。お客様から問い合わせがあっても「一度確認します」とAさんに都度確認しなくてはいけません。連絡が取れる時間帯は限られていますので、お客様をお待たせしてしまうことになります。

 

やむをえず各営業の判断でお客様の問い合わせに対応しようとしたら、「それは先日聞いていたことと違う」とか「それはさんざん聞かされている」など、空回りに空回りが重なります。結果、Aさんはそのまま希望退職することになり、そのお客様も、他業者と契約することになってしまいました……。

 

このエピソードは、決して空想上の笑い話ではなく、実際に、業務統合システムを導入していながらも、リード化を怠った企業でよくある話なのです。多少ディテールは違うとはいえ、耳が痛い経営者も少なくないでしょう。

業務承継のためにもリードのシステム化は重要

リードは、お客様の情報を拾いこぼさないようにするためのツールですが、その本質は、第三者と共有できるという点にあります。先の例で、もしAさんが、手帳に書かれている情報をすべて業務統合システムに入力し、リードを充実させていれば、結果はどうだったでしょうか? 他の営業担当も、Aさんと同様にお客様に接することができており、Aさんの優秀な営業成果をしっかりと引き継げていたはずです。同時に、お客様も他業者に流れていくようなことはなかったと予想できます。

 

「今いる人間」が、「今と同じ場所」で、「今と同じように活躍している」という場合は、ブラックボックスにはなりません。しかし、「今いない人間」となり、「今と違う居場所」になり、「今のように活躍できていない」となった場合に突然、前触れなく発露するのです。

 

そこで、経営者の皆様にお聞きしたいことがあります。

 

「今、近い将来に退職を控えている世代がどの程度いますか?」

「事業承継とともに、中核メンバーが替わるタイミングが近くありませんか?」

 

もし、現時点での主要メンバーが近い将来に退職をする世代だったり、事業承継によって、先代から会社を引き継ぐタイミングであるとしたら、社内でも世代交代が加速する可能性があるので、遠からずリードがブラックボックス化してしまう可能性はあります。

 

[図表]リードのブラックボックス化とは?

 

業務統合システムを導入せず、アナログな顧客管理方法のままで主要メンバーが辞めたら、まったく引き継げないことになってしまいます。主要メンバーがいるうちにシステム化して、今いるメンバーが辞めた後でもスムーズに業務が回るように準備したいという相談ケースも後を絶たないのです。特に経営者が交替する場合、数年後に交替してからではなく、今のうちからシステムの導入を考えていくことも重要になってくると考えています。

 

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本記事は、小松延顕氏が監修した『10年後に生き残るための 建設DXの現在地 デジタル化で目指す持続する中小建設業』(サンルクス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

10年後に生き残るための 建設DXの現在地 デジタル化で目指す持続する中小建設業

10年後に生き残るための 建設DXの現在地 デジタル化で目指す持続する中小建設業

小松 延顕

サンルクス

ウッドショックや石油値上げによる原材料費の高騰。人口減少による慢性的な人手不足や2024年に迫る働き方改革の実現など、中小建設業を取り巻く経営環境は厳しさを増す一方です。その解決のため「DX=デジタルトランスフォーメ…

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