(※写真はイメージです/PIXTA)

老いるということは、いろいろな機能が衰えたり失われていくことです。しかし、80代でも、まだ続いていく老いを楽しむことができます。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『老人入門 いまさら聞けない必須知識20講』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

老いは多くの機能が衰え、失われていく

■できないことがどんなに増えても、まだ老いの時間はたっぷり残っている

 

身も蓋もない言い方ですが、老いてからの時間はどんなに長くても最後は死で幕を閉じます。

 

そのときにはもう、ほとんどの残存機能は失われています。

 

身体的な機能も脳の機能も含めて、老いるということはポロリポロリといろいろな機能が衰え、失われていくことでもあるのです。

 

でも、たとえいろいろな機能が衰えたり失われていくとしても、まだまだ80代でしたら老いを楽しむことができますし、実際に80代どころか90代になっても生活の中に楽しみをいくつも育て、残りの人生を幸せに過ごす人がいます。決して珍しいことではありません。

 

そういう高齢者に共通するのは、諦めないということです。脚が弱っても散歩は諦めないで、手押し車に頼っても続ける。それもできなくなったら車椅子を押してもらっても続ける。もちろんそのときには介護する人のお世話になっているでしょう。

 

仲間や友人と会うのも面倒がりません。女性でしたらやはりおしゃれして出かけようとします。歩くのも、電車やバスに乗るのだって大変ですが、それくらいのことでは諦めません。本を読むのが好きな人でしたら、たとえ目が不自由になってもオーディオブックという手があります。聴力さえ残っていれば、読書の楽しみは諦めないで済むのです。

 

老いはゆっくり進むと何度か説明してきました。

 

残存機能も同じで、いきなり消えてしまうわけではないし、あれもこれもパタリとなくなってしまうわけでもありません。

 

逆に言えば、残存機能を活かしてできることや生活の中の楽しみを保ち続けることが、老いの進行を食い止めることにもつながってきます。

 

「自分から率先して力仕事はできなくなったけどまだ手伝いくらいならできる」
「新しいことを覚えるのは苦手になってきたけど、教えてくれる人さえいれば何とかなりそうだ」

 

たとえばその程度の老いでしたら、何も気にすることはありません。やってみたいことを楽しむ気持ちにさえなれば、どんな世界にも足を踏み入れることができます。いざとなったら頼れることは人に頼り、あるいは自分の役割を小さく限定しても楽しみを諦めないで済むのです。

 

そういう生き方に切り替えれば、まだまだ続く老いを楽しみながら生きることができます。「自分一人じゃできない」とか「他人の助けを借りてまで」といろいろな願望を諦めてしまうより、はるかに生活の幅や質を落とさないで生きていくことができます。

 

それによってわずかでも残された機能を維持できれば、いくつになっても残された人生の中に楽しみの種を育てていくことができるのではないでしょうか。

 

和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長

 

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