上司と部下の役割における「位置関係」を保つ
■マネジメントの注意点2
昨今、上司と部下の距離感が近いマネジメントが推奨されているような風潮があります。飲みニケーションや1on1ミーティング、部活動などを否定するつもりはありませんが、すべて注意が必要です。
上司と部下の関係から考えてみましょう。上司と部下の関係は、あくまでも組織内における役割で構成された位置関係に過ぎません。上司は部下を成長させ、自チームを勝利に導く責任があり、部下は仕事を実行する責任を担います。会社内において、上司と部下の関係はこれ以上でもこれ以下でもありません。そのため、距離を縮めようとするマネジメントは、この上司と部下の役割における位置関係を壊してしまう原因になりかねないということです。
「よく頑張ったな。今日はお祝いに飲みにいこう」
初めの1、2回は、効果があるかもしれません。しかし、これが継続的に行われると本来の意図からは外れてしまいます。
「この人とは合わない」とか「この人は気が利かない」など、上司と部下の関係ではなく、個人的に好きか嫌いかで人を見るようになってしまうのです。挙句の果てには、「この上司の指示は聞いても意味がない」など、上司のいうことを無視するようになってしまう恐れもあります。
私は、いまでも上司は怖いです。なぜなら私を評価する人だからです。人として怖いということではなく、上司からの評価を勝ち取れない場合、その組織のなかでは生きていけません。これは、新卒1年目に仕えた上司から教わった考えです。その上司は、感情的になるタイプではなく、常に冷静で相談をしやすい上司でした。しかし、部下とは一定の距離感を保ち、個別に飲みにいくなどということはありません。そのおかげで、誰に対しても正当な評価をしてくれました。
距離が近い上司がよい上司とは限りません。いまこの瞬間ではなく、未来に向け成長させてくれる上司であるかどうかが、部下にとっては重要であるはずです。