(※写真はイメージです/PIXTA)

財務省の官僚はプライマリー・バランスが赤字ですから一刻も早くこれを解消したい。だから少しでも景気が良くなったら、あるいは企業収益が増えたら、「消費税の増税をやりましょう」と口説きます。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

デフレ脱却のチャンスを潰す財務省

■日本という国の借金

 

「国債は国の借金」とよく言われます。いま現在、日本の政府は借金しているかもしれませんが、民間にはお金が余っています。というのも、民間はとくに国外にお金をどんどん出していますから。要するに“カネ余り”の状態です。そんな国が借金大国ということはあり得ないことです。国全体としては借金どころか、お金を持て余している。世界に向けてお金を大いに供給しているわけです。

 

そもそも「国の借金4 」という言い方が大変な誤解を招くと思います。国債は言ってみれば政府の借金、政府の債務です。政府の債務は民間の債務や家計の債務とわけが違います。どういう意味で違うのかというと、政府は最終的になんとでも債務を処理できるということです。

 

ひとつは永久国債にできます。つまり償還義務がない国債にするという方法です。利払いだけするというものです。利払いといっても、いまの日本は金利がゼロだから払う必要はありません。

 

それからもうひとつは政府には徴税権があるということです。その税金で国債を償還するという方法です。しかし、それだと増税してまで返せということになりかねません。そうなると増税してまで返す意味があるのかがポイントになります。

 

景気が過熱している、つまりこのままだと相当なインフレになるかもしれないというときは、確かに財政を絞って、需要を抑えていくことはあっていいでしょう。こういうときに国債償還のための増税はできます。

 

これらの対処ができるということで、政府の債務は企業や家計の債務とは違うのです。

 

■デフレ脱却のチャンスに失敗した理由

 

ホワイトハウス高官が「日本はこのまま沈んじゃダメだ、中国に対抗するためにも日本は強くなければならない。だから小泉改革を成功させ、日本の経済を小泉の手でよくしたい……それでアメリカに利益が回ってくる」と強調していたこと、そして小泉政権時代の経済成長に結びついたのは、外務省の溝口善兵衛財務官とアメリカのジョン・テイラー財務次官の“密約”による円安誘導だったことにも触れました。

 

小泉政権時代に景気は輸出主導で回復しました。しかしデフレからは脱却できませんでした。それはなぜでしょう。

 

やはり内需が立ち上がらなかったことに尽きます。加えて財政も均衡主義、緊縮主義を貫いて、財政出動を控えました。そのため財政収支赤字のGDP比はどんどん縮小していきました。縮小していったとはどういうことかというと、それだけお金を吸い上げて、民間には戻さないということです。

 

要するに国債の償還ばかりやっていたということです。そうなると内需はなかなか立ち上がりません、お金が出てこないわけですから。

 

均衡主義、緊縮主義にさえこだわらなければ、小泉改革のときにデフレ脱却できました。否、脱却できなかったとしても、そのきっかけはつくれたと思います。

 

財政収支は均衡していなければならない、プライマリー・バランスがゼロにならないといけない理由はどこにあるのでしょうか。政治家としては「財政は悪化しちゃダメだよな。プライマリー・バランスがゼロになるようにもっていったら俺の功績だ」という考え方になるのでしょうか。

 

田村 秀男
産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員

 

 

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本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

田村 秀男

ワニブックスPLUS新書

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