今回は、実物資産として保有を検討したい東京都心部のワンルーム・マンションの利点、投資の条件などを見ていきましょう。

東京都内のマンションなら空室リスクを低減できる!?

一口に不動産といっても、オフィスビル、居住(レジデンス)用マンション、戸建、木造アパートなど、形態はさまざまです。それでは、私たちはどのような不動産を持てばよいのでしょう。

 

まず、ビルやマンションを1棟丸ごと買うというのは、資金的になかなか難しいのではないでしょうか。また、地理的分散の観点からもおすすめできません。みなさんがよほどの資産家で、キャッシュでいくつもビルを購入できるならいいかもしれませんが、そのような人は日本にそれほど多くはいないでしょう。

 

もちろん地方都市であれば、丸ごと1棟で1億円以下の物件も珍しくはなく、何とか手が届くかもしれません。ただ、それでもやめておいたほうが賢明だと思います。やはり、不動産はヒトが入ってナンボ。安定的に賃借人を確保したければ、少なくとも東京・名古屋・大阪の三大都市圏、できれば東京都内がベターです。

 

地方であっても、大きな会社や工場などに隣接している物件であれば、安心だと思われがちです。しかし、工場が海外などに移転してしまえば、根こそぎ借り手がつかなくなることを忘れてはいけません。都内のマンションであれば、同様のことが起きても、借り手がいなくなる可能性はまずないでしょう。つまり、空室リスクを大幅に低減できるのです。

 

とはいえ、都内でまともなビルを1棟丸ごと買おうとすると、最低でも3億円はかかります。総資産が10億円以上ある人でない限り、そんな物件を購入するのはまず不可能だと思われます。

 

全額キャッシュではなく、借り入れを起こして買うという手もあるわけですが、これからの時代は、金利の上昇も想定しておかなければなりません。であれば、全額ローンなどはもってのほか。たとえ一部を借り入れるにしても、その金額はいつでも返済できる範囲内に抑えておくべきでしょう。

木造アパートの購入は慎重に

では仮に、資産2億円程度の人が予算6000万円ほどで現物不動産の購入を検討した場合、どのような物件が望ましいのでしょうか?

 

結論からいうと、都心部のワンルーム・マンションがよいといえます。ワンルーム・マンションの大家さんには、サラリーマンなどを兼業している人も多く、比較的気軽に始められるといってよいでしょう。2000万円くらいあれば、都内でそれなりの物件を見つけることができるので、資金が6000万円あれば3戸は持つことができます。3戸物件を持てば、十分に地理的分散を図ることができます。

 

また、ワンルーム・マンションは、1棟ものの物件に比べて相続の際に便利です。たとえば、子どもが3人いた場合、1棟ものの場合は平等に分けて相続させるのが難しいですが、ワンルーム・マンションであれば、1人1室ずつとして、簡単に分けることができます。そのため、子どもの数だけワンルーム・マンションを持つ方も多いようです。

 

ところで、価格の安さや収益率の高さから、郊外の木造アパートを購入する方がいますが、あまりおすすめはできません。木造物件は鉄筋の構造物と違って耐用年数が短く、20年もするとあちこちガタが出始めます。この場合のメンテナンス・コストは決して馬鹿になりませんし、手間もかなりかかります。

 

筆者の顧客の中にも、相談に来られる前に郊外のアパートを丸ごと1棟、4000万円ほどで買った方がいますが、いつも「手間がかかる」と嘆いています。その方は、不動産投資のノウハウなどをあまり勉強しないままに、アパートを買ってしまったそうです。辺鄙な土地柄のため、そもそも満室にするのも大変で、いつも空室リスクに悩まされているといいます。

 

そのうえ、管理会社に物件管理を委託するコストを省くため、休日には自ら出かけていって、草むしりをしているとのこと。1棟丸ごと所有していて戸数が多いということは、それだけトラブルの数が多いということでもあります。頻繁に「エアコンが故障した」「鍵が壊れた」「水漏れした」などの苦情が寄せられ、そのたびに対応しているそうです。

 

このような例は、決して珍しくありません。新規に購入するのはもちろん、たとえば「節税のため、今遊んでいる土地に木造アパートを建てましょう!」といった、よくある住宅会社の勧誘にも乗らないようにしてください。

ワンルーム・マンション投資の条件とは?

ワンルーム・マンションといっても、もちろん何でもいいわけではありません。筆者の場合、ワンルーム・マンションを選ぶときは、おもに次のような点を意識するようにとお話ししています。

 

●中古・築浅(築15年前後まで)
●都心部の駅から近い便利な立地
●30戸以上の中規模マンションを選ぶ

 

新築ではなく中古がいいのは、値段が割安だからです。一般に、マンションの売り出し価格には、建築会社の利益や宣伝広告費、人件費などのコストが含まれています。そのため、新築物件は販売された瞬間に、その部分が減価してしまいます。

 

一方で、新築物件を買ったオーナーは、購入後2年とか5年といった短期で手放すことはまずありません。一般的にいって、中古市場に出てくる物件は、10年程度経過したものが大半です。このような物件は、すでに相場の急落期(=新築直後)を終えているので、たいていその後の値下がりは緩やかです。

 

自分で住むなら、たしかに新築は気持ちがいいものですが、投資用不動産でそのようなことを考える必要はまったくありません。中古の中でも比較的新しい「築浅」の物件を選ぶのが基本と考えてください。築浅の場合、当然ながら「築深」物件よりは価格は高いですが、比較的借り手もつきやすい傾向があります。

 

マンションの稼働年数(=寿命)は、原則として50年程度といわれます。古すぎる物件の場合、早い段階で稼働できなくなる(賃貸収入を生まなくなる)おそれがありますし、修繕などの手間もかかります。しかし、築浅か築深のどちらがよいか――というのは、ケースバイケースでもあります。

 

次回は、買うタイミングなどについてさらに詳しく見ていきましょう。

 

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本連載は、2013年12月19日刊行の書籍『日本が財政破綻しても資産を奪われない10の投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

日本が財政破綻しても 資産を奪われない10の投資

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田中 徹郎

幻冬舎メディアコンサルティング

日本の財政は深刻な事態に陥っており、「財政破綻」も決して非現実的なシナリオではありません。特に、資産を円建ての現預金や国債などのペーパー・マネーに集中させていれば、その損害は計り知れません。財政破綻によって、円…

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