前回は、「10の投資」ペーパー資産(非サイクル性)編②として、MLP(マスター・リミテッド・パートナーシップ)について解説しました。今回は、「プライベート・バンク」について見ていきます。

一般の商業銀行とは異なり、「顧客の資産運用」に特化

プライベート・バンクは、銀行の一形態ですが、その業務は多岐にわたります。顧客は世界中の富裕層が中心ですが、最近は小口の資金も受け付ける傾向にあります。彼らの資産の管理や運用を「一任勘定(顧客の運用の一切を引き受けること)」で請け負うことが、メインの業務です。

 

世界中さまざまな国にプライベート・バンクはありますが、その銀行の歴史や実績などを研究し、預け先を検討しなければなりません。インフラも未発達な新興国のプライベート・バンクなどは、避けるべきでしょう。

 

プライベート・バンクを利用すれば、資産の一部を完全に国内の資産と分離して運用することができます。そのため、日本が何らかの危機に見舞われたとしても、資産を保全することができます。また、顧客一人一人に専門の担当者がつき、適切に資産運用してもらえるので、預ける側にとっては安心、かつ便利なサービスといえるでしょう。

 

その運用先ですが、市販の投資信託や株式、債券の個別銘柄はもちろん、日本では買えない金融商品、たとえばETFやマネージド・フューチャーズなども含まれ、買えないものはありません。最低投資額1億円といった機関投資家向けヘッジファンドも、プライベート・バンク経由であれば、比較的少額で購入できます。

 

あるいは実物資産である金やプラチナや銀の地金を購入し、専用の金庫で預かってもらうこともできます。私の知り合いの英国人には、プライベート・バンク経由でクラシック切手を購入した人もいます。英国にはそのようなアドバイスを行う会社があるのですが、プライベート・バンクの担当者が、その外部アドバイザーと協力して切手ポートフォリオを構築したそうです。

 

もちろん、対象は切手だけではありません。美術品やクラシック・コイン、あるいは投資用不動産など、プライベート・バンクのネットワークは幅広く、顧客が希望するもので買えないものはないのです。

 

なお、プライベート・バンクは一般の商業銀行とは違い、与信や運用は行いません。業務を「顧客の資産の運用」に特化しているわけです。したがって、自ら不良資産を抱え込むこともありませんし、それが原因で経営破綻する心配もありません。顧客の金融資産は金融業界で起こるリスクとは隔離され、安全に管理されます。「地球上で最も安全なお金の置き場所」といってよいでしょう。

最低預入額など利用のハードルも高いが・・・

ヘッジファンドと同様、富裕層にターゲットを絞っているため、最低でも1億円程度の資産がなければ口座開設そのものができません。世界にほんの一握り存在する超富裕層だけをターゲットとし、最低10億円以上でなければ口座開設できないプライベート・バンクもあります。

 

ただし、比較的小さな金額でプライベート・バンクに口座を開く方法もあります。そもそも、プライベート・バンクでは一人一人の顧客ごとに専任者をつけるので、どうしてもコストがかかります。逆にいうと、この助言行為を外部に分離してしまえば、コストはさほどかかりません。この場合、プライベート・バンクは単なる「カストディアン(資産管理銀行)」として位置づけられます。

 

この方法は、すでにいくつかのプライベート・バンクで採用しています。これらのプライベート・バンクは一般にスイスの助言業者などと提携し、助言行為を任せる代わり、彼らの顧客の最低預入額を引き下げます。もちろん、日本人もこのサービスを受けることができますし、私もたびたびお客さまのご希望で、口座の開設のお手伝いとその後の助言を行いますが、この場合の預け入れの最低額は3000万円程度です。

 

参入しにくさに加え、プライベート・バンクの欠点として、各種コストの高さを挙げることもできます。まず口座には維持管理手数料がかかり、一般にこれは残高の0.5%程度です。さらに、運用アドバイスについても別途手数料がかかります。口座を通じて株式や債券、投資信託を買えば、通常一注文当たり500ドルほどの定額手数料が発生します。

 

ただし、ヘッジファンドなど、元々購入手数料が高い金融商品は、逆に安く買える場合があります。たとえば、ヘッジファンドの平均的な購入手数料は3〜5%程度ですが、プライベート・バンク経由で買うと、機関投資家間の手数料が適用され、先ほどの定額手数料のみで済む場合があります。

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    本連載は、2013年12月19日刊行の書籍『日本が財政破綻しても資産を奪われない10の投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    田中 徹郎

    幻冬舎メディアコンサルティング

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