パイプラインや貯蔵施設の利用料などが収益源
景気に左右されない非サイクル性資産はほとんどない――これは連載の中で何度もお話ししてきたとおりです。しかしながら、最近注目され始めている新しい商品に、非サイクル性資産の特徴を備えたものがあるので、ご紹介しておきましょう。
その商品は、米国の証券市場に上場する「MLP(マスター・リミテッド・パートナーシップ)」と呼ばれるものです。
MLPはREITと非常によく似た仕組みを持っています。REITが不動産を組み入れているのに対し、MLPは「エネルギーインフラ関連事業」が投資対象です。REITは賃貸収入を収益としていますが、MLPはパイプラインや貯蔵施設の利用料などを収益源としています。
このように両者の収益源は異なりますが、得られた収益の大半を投資家に分配する仕組みは同じです。MLPはあくまで利用料が収入であるため、エネルギー価格には連動せず、キャッシュフローは安定的といっていいでしょう。
個人投資家にはなじみが薄く、情報は限られている
なお現在のMLPの平均的な収益率は6.5%程度と、REIT(3.5%程度)に比べ高くなっています。ご存じのように、昨今北米ではシェールガスの生産が急増しており、長期的にパイプラインの高いニーズを見込むことができます。一般的にMLPが所有するパイプライン等の施設は、その利用者との間で10年程度の長期契約を結んでおり、その点で景気サイクルには翻弄されにくいともいえます。
MLPの安定した将来性は機関投資家も注目しており、MLP全体の上場時価総額は10年前の約8倍。2013年6月末時点で、約42兆円規模にまで成長しました。それと同時に、上場銘柄数もどんどん増えています。パイプライン事業を手掛けるエネルギー企業の株式を買う方法もありますが、MLPであれば前述のように6.5%の高い分配金を受け取ることができます。
安定した分配と成長性への期待から、機関投資家の間では話題の商品ですが、まだ個人投資家にはなじみが薄く、情報も限られているのはデメリットでしょう。「これからの商品」なので、今から目をつけておくことをおすすめします。