前回に引き続き、ワンルーム・マンションへの投資がテーマです。今回は、物件の稼動年数と自分の年齢との関係、現地視察の重要性、買うタイミング、賃貸管理業務を任せるべき仲介業者などについて見ていきます。

年齢によって選ぶべき築年数は変わってくる

仮に、現在35歳の人がワンルーム・マンションに投資するというなら、築深物件でもいいかもしれません。築深物件は安く買うことができるというのは前述のとおりですが、都内のそこそこの立地でも、たとえば築25年、800万円程度で見つけることは可能です。人気エリアであれば、築深でも家賃はさほど安くならないので、投じた金額に対する収益率(「賃貸料収入÷購入価格」)は高くなります。

 

ただし、前述のように築深物件の場合、残された稼働年数は短いので、たとえば買った時点で築25年であれば、残り稼働年数は大体25〜30年くらいでしょう。つまり、今35歳のオーナーが60歳前後になる頃、物件は寿命を迎えることになります。

 

60歳くらいであれば、まだフットワークも軽いと思われるため、その時点で不動産ポートフォリオの入れ替えを検討してもいいですし、もしくは賃貸料収入によって初期投資額を回収した時点で、その物件を売却し、新たな不動産投資を考える手もあります。

 

これに対し、現在50歳の人が不動産を購入しようとする場合、築25年のワンルーム・マンションは、果たして適しているといえるでしょうか? この場合、マンションの寿命は、オーナーの定年後、75歳くらいのときに尽きることになります。すでに年金しか収入がなくなっているときですから、このタイミングで賃貸収入が突然途絶えるのは、好ましいことではないでしょう。

 

不動産投資が大好きという元気な人ならいいですが、一般的には、75歳からまた物件探しをして、不動産ポートフォリオを再構成するというのも大変だと思います。このような理由で、中高年以上の人には、築15年前後までの、稼働年数の長い築浅物件をおすすめします。

価格が多少高くても、利便性の高い地域を

続いて立地条件ですが、ごくわずかな一等地を除き、通常は駅から離れれば離れるほど、借り手がつきにくくなります。そこで筆者が定めている条件は、最寄り駅から「7分以内」であること。これくらいが、一般的に人が駅から近いと感じる距離といえます。なおかつ、スーパーやコンビニなども近くにあればよいでしょう。

 

ただし、近くに駅があっても、「各駅停車しか止まらない」「買い物できるエリアが充実していない」などの理由で利便性の低い地域は、人気がありません。多少価格が高くても、人気エリアの人気路線、人気の駅周辺なら、家賃の値崩れもしにくく、価値が安定しています。

 

このような物件の場合、たとえ将来ライフプランが変わり、手放さざるを得ない状況になったとしても、そこそこよい値で売れるという期待も持てます。

 

インターネットで情報を検索すれば、いくらでも物件は出てきますが、条件だけで判定せず、現場を歩いてみることをおすすめします。ネットの情報だけでは、街の雰囲気はわかりません。ワンルーム・マンションの場合、借り手として一人暮らしの女性もターゲットになるため、治安が悪いエリアが近隣にあると、それだけで借り手が減ってしまいます。足を運び、目で見て確かめるべきでしょう。

 

また、小規模すぎるマンションは、修繕積立金などが割高になりがちなので、30戸以上の中規模なマンションを選択するのが得策です。このとき、1階の部屋、特に半地下になっている部屋は借り手がつきにくく、家賃もディスカウントされる傾向にあるため、おすすめできません。選ぶなら、2階以上の部屋にしましょう。

 

筆者は相談者の方から、時々、物件の視察を依頼されますが、先日もこのようなことがありました。対象のマンションは、駅からほんの徒歩1分。周りの環境も素晴らしく、不動産会社の物件情報からは特に問題点は見つかりませんでした。

 

ところが、実際に確認に出向くと、土地が奥に向かって急に勾配しており、検討対象の部屋は2階にあるにもかかわらず、実際には前面道路より下、つまり半地下にあることがわかったのです。昨今頻発するゲリラ豪雨などを考えると、浸水のおそれがあるため、このような物件は投資対象として不適格です。現地を見ないとわからないことも多いので、いくら遠方でも必ず現物をチェックしてください。

 

また、よく「部屋の日当たり」を気にする人がいますが、ワンルーム・マンションの場合、住人は昼間家にいないケースが多いため、そこまで重視する必要はありません。よいに越したことはないですが、優先順位は下位です。特に東京の場合、おひさまがさんさんといった立地のほうがむしろ珍しいので、目をつぶってもよいでしょう。

不動産の投資は、都市への投資と考える

●買うタイミング

不動産を買いたい人が増えれば、相場はどんどん上がります。1980年代からのバブル景気のときに、不動産価格が暴騰したことをご記憶の方も多いでしょう。いうまでもなく、このような相場の過熱時に買ってしまうと、高値づかみをしてしまうリスクが高くなります。なるべく、誰もが見向きもせず、相場が閑散としている時期に物件を選びたいものです。

 

2013年秋の時点で、東京の不動産相場は多少上昇しつつありますが、まだまだバブル化しているとはいえないでしょう。むしろ東京は、たとえば香港や上海、シンガポールといったアジア諸都市に比べると、その割安感が目立ちます。昨年以来の円安によって、ドル建ての不動産価格が下落し、さかんに外国勢が東京の不動産を買っているようですが、彼らは世界的に見た東京不動産の割安感に注目しているのでしょう。

 

余談ですが、今、日本人投資家に人気のマレーシアでは、ジョホールバルといった都市の中心部のコンドミニアムが飛ぶように売れており、価格も高騰しています。70〜80㎡の物件で3000万円程度に達しているといわれますが、今後どうなるかはわかりません。

 

このような現象を、バブルと呼ぶべきではないかと私は思います。私は不動産への投資は、ある意味で都市への投資だと考えています。その意味で東京を見るとどうでしょう。安全な環境と勤勉な国民、高度に張り巡らされた鉄道網に高速道路などのインフラ網、都市と空港の近さ、高度に発達した通信網――このように、都市としての高い機能を備えており、少なくともアジアの諸都市との競争に勝ち抜いていく資質は、十分備えているように思います。

仲介業者は賃貸管理の専門部署を持っているか?

●どこで買えばよいか

インターネットを使えば、いくらでも物件を探すことができます。が、不動産投資の素人が、インターネットだけで優良物件を見つけるのは困難です。不動産は家電や本を買うのとはわけが違います。パソコンの画面上で見る限りは非常に優良に思えても、実は問題だらけの物件が潜んでいることも少なくありません。大きな買い物ですから、やはりきちんとした不動産仲介業者の手を借りるべきでしょう。

 

なお、不動産投資で最も重要な点の一つとして「いかにして、長期的に物件を管理していくか」が挙げられます。何しろ、不動産は「百件百様」です。しかも購入した時点では何の効用もなく、人がそこに住んで初めて賃貸料収入という効用が生まれます。

 

つまり、どのようにして空室を避けながら物件を長期的に稼働させ続けるか。あるいは、どのようにして滞納を防ぐか。どのようにして賃借人のクレームや希望に対応するか。どのようにして物件をメンテナンスするか――こうした舵取りをうまくこなしていかなければなりません。

 

オーナー自らが完璧に管理できれば、それに越したことはないでしょうが、複数の物件を所有していたり、あるいは遠方に物件がある場合、このようなことを長期的に行うのは難しいといえます。プロの手を借りるのが無難でしょう。

 

では、このような「賃貸管理業務」は、一体誰に依頼すればよいのでしょうか? たいていの場合は、みなさんが不動産を購入した不動産業者が行うことになります。不動産投資の成否は彼らにかかっているといっても過言ではないため、インターネットなどで適当に業者選びをするのはおすすめできないのです。

 

一般論ではありますが、不動産の販売や仲介業は参入が容易だということもあり、比較的規模の小さい会社であることが多いようです。彼らは販売の際、「もちろん賃貸管理業務を責任を持って請け負う」とはいいますが、残念ながら実情が伴っていないこともしばしばです。

 

小規模の仲介会社では組織だった賃貸管理業務を行っていることさえまれで、一般的には営業担当が賃貸管理を行うケースが多いようです。この場合、担当者がやめたり、転勤になったりすると、ほとんど対応してもらえなくなってしまいます。よって、仲介業者選びをするときは、組織だって賃貸管理を行っている業者か否か、つまり賃貸管理のための専門部署を持っているか否か――この点の見極めが重要といえるでしょう。

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    本連載は、2013年12月19日刊行の書籍『日本が財政破綻しても資産を奪われない10の投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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