サイクル性ペーパー資産はリバランスするべき?
前回の続きです。最後に、サイクル性ペーパー資産のメンテナンスについてお話しします。
サイクル性ペーパー資産――いわゆる株式、債券、コモディティ、あるいはそれらを組み込んだETF、投資信託などを指していますが、一般的にこれらは定期的なメンテナンスが不可欠だといわれています。放っておくと、景気の変動など世界経済の動向によって、大幅な損失を被るリスクがあるからです。そのくらいなら、「早めに損切りをして、損失を限定したほうがいい」とは、よくいわれる話です。
また、ポートフォリオのバランスを整えることも重要とされています。たとえば、資産を2等分して、債券と株式に50%ずつ投資したとします。そして1年後、相場の変動によってバランスが崩れ、債券の割合が60%、株式の割合が40%まで減少したとしましょう。
その時点で、一部の債券を売却し、株式を買い足してバランスを図り直す―このような行為を「リバランス」と呼びます。リバランスを行うのは、ポートフォリオを組んだ当初の運用方針を維持するためですが、値上がりしたものを売って、相対的に安くなっているものを買うということでもあり、資産運用の基本として推奨されているわけです。
損切りやリバランスに「固執する」のは禁物
ただ、私は必ずしもこのような損切りやリバランスにこだわることはないと考えています。
そもそも、最初から吟味して買っている商品であれば、頻繁に売り買いする必要はありません。私はよく「長期的な成長を期待できるものだけを選びましょう」とお話ししていますが、その代表選手は「新興国株ETF」や「コモディティETF」です。これらの資産は長期的に見て、成長が期待できます。たとえ一時的に大幅に値下がりしても、長い目で見てその成長性が失われるわけではありません。
これも「そもそも論」ですが、サイクル性資産であれば、景気の変動に合わせて値上がりするのも値下がりするのも必然です。最初にポートフォリオを構築した時点で、それはわかりきっているはずです。
つまり、一時的に資産が目減りしても、それは当然起こるべきことが起こっているだけにすぎないわけで、いちいち騒ぎ立てるようなことではありません。ですから、放置しておくというのも一つの考え方でしょう。
しかし、このような価格変動に対する「耐性」は人それそれです。中には「明らかに目先で下がるのであれば、先んじて売りたい」と考える人もいるでしょうし、その気持ちも私自身よく理解できます。
たとえば、ある国が景気後退期に入り、どう考えても株式ETFが長期的に低迷するのは明らか――このような状況ならば、損切りして現金を多く持ち、逆に下げきったところで再度買い直したいと考えるのも自然です。
ただ、私自身は、そのような損切り&再参入が功を奏さない例も山ほど見てきました。絶対にこうなるだろうと予想しても、その予想が外れることはよくあります。マーケットに「絶対」はありません。私自身、損切りをしたことは何度もありますが、後になって「結局あのときの損切りはムダだったな」と思ったことも、数えきれません。
もちろん、予測が当たることもあるでしょうが、当たらないことも同じくらいよくあります。つまり勝率は五分五分と考えておくべきでしょう。「五分五分なら、あえて勝負しない」このような考えから、私は損切りやリバランスにはそれほどこだわっていないのです。