30年前と現在の消費者物価の比較
次に、消費者物価の中身について約30年前と現在を比較する。1991年平均のコアCPI上昇率は2.9%と直近の上昇率(2022年8月の2.8%)とほぼ等しい。足もとの物価上昇の主因は、資源・穀物価格の上昇や円安の進展を受けたエネルギー、食料(生鮮食品を除く)の大幅上昇である。2022年8月のコアCPI上昇率2.8%のうち、エネルギー(1.32%)と食料(0.95%)の寄与が8割以上を占める。これに対し、1991年は、食料の寄与(1.03%)は足もとと同程度だが、エネルギーの寄与(0.16%)は小さく、その他の寄与が1.71%と全体の約6割を占めていた(図表5)。
財、サービス別には、2022年8月は物価上昇(2.8%)のほぼ全てが財の上昇(寄与度で2.77%)によるもので、サービスの寄与はほぼゼロとなっている。サービスのうち、一般外食は原材料費高騰の影響などから前年比で3%台の伸びとなっているが、家事関連サービス、医療・福祉サービスの下落が続いていることがサービス価格を押し下げている。近年は、家賃がほとんど伸びていないこともサービス価格低迷の一因となっている。これに対し、1991年は財の寄与度が1.80%、サービス(除く家賃)の寄与度が0.76%、家賃の寄与度が0.34%と、財の寄与が全体の約6割、サービスの寄与が約4割となっていた。
物価上昇の裾野の広がりを見るために、消費者物価指数の対象品目(2020年基準のコアCPIは522品目)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、2022年8月の上昇品目数は372品目、上昇品目数の割合は71.3%となり、近年(2005年基準で遡ることができる2006年1月以降)では最も高くなっている(図表6)。しかし、1991年*2を振り返ってみると、上昇品目数の割合は8割を超えており、今以上に物価上昇が裾野の広がりを伴ったものとなっていたことが確認できる(図表7)。
品目毎の動きをさらに詳しく見るために、品目別分布(ヒストグラム)を確認すると、2022年8月は、コアCPI上昇率が3%近くまで高まる中でも、品目別の上昇率はゼロ%近傍*3が最も多く、全体の25.1%となっている(図表8)。次に割合が高いのは1%近傍で14.2%、日本銀行の物価目標である2%近傍の割合は8.4%にとどまっている。これに対し、1991年は最も割合が高いのは直近と同じくゼロ%近傍だが、その水準は16.2%と2022年8月に比べて10%近く低い。現在と異なるのは、2%近傍(12.6%)、3%近傍(12.8%)の割合が高く、4%近傍(9.4%)、5%近傍(8.8%)、6%近傍(7.4%)がそれに続いている点である。1%近傍(7.2%)の割合は低く、2022年8月と比べると約半分となっている。
2022年8月の品目別分布を1991年と比較すると、全体的に上昇率の低い品目の割合が高い。それにもかかわらずコアCPIの上昇率がほぼ等しいのは、2022年8月は9%近傍、10%近傍以上の品目割合が1991年を上回るなど、エネルギー、食料を中心に非常に高い伸びとなっている品目が多いためである。
このように、足もとの物価上昇は非常に高い伸びとなっている一部の品目によって押し上げられている面がある。そこで、一時的な撹乱要因や異常値などの影響を除去するため、「加重中央値」、「刈込平均値」を求める。加重中央値とは、品目別上昇率の高い順から数えてウェイトベースで50%近傍にある品目の上昇率である。刈込平均値は、分布の両端の一定割合(ここでは上下それぞれウェイトベースで10%)を控除した場合の上昇率である。
コアCPI上昇率の加重中央値は、1991年の2.8%に対し、2022年8月は0.5%、刈込平均値は1991年の2.7%に対し、2022年8月は1.9%となった(図表9)。1991年は全体の上昇率と加重中央値、刈込平均値がほぼ一致しているのに対し、2022年8月は加重中央値、刈込平均値ともに全体の上昇率を大きく下回っている。
足もとの物価上昇は近年では裾野の広がりを伴ったものとなっているが、約30年前と比べれば、一部の品目の非常に高い伸びによってもたらされている傾向が強い。
*2:1990年基準(生鮮食品を除く総合の品目数は500)で計算
*3:品目分布は1%刻み。ゼロ%近傍は▲0.5~+0.4%
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