はじめに
いま世の中では、AI(人工知能)を活用した技術開発が急速に進んでいる。たとえば、AIを用いて、小売業で消費者のニーズ変化を的確に捉えて商品の品ぞろえを変えたり、鉱工業で物流を最適化して製品の生産効率を高めたりする取り組みが行われている。
情報サービス分野でも、AIの活用が進んでいる。一例として、AIを搭載したチャットツールがある。前もって顧客からの質問とその回答のシナリオを設定しておき、該当するシナリオに最も近い質問をAIが自動で判断する。シナリオを豊富に用意しておけば、まるで人間とやり取りしているような対応が可能となる。
その他にも、安全で快適な自動運転、利便性の高い金融システム、未病を検知する効果的な健康管理など、人々の生活の質の向上を図る観点でも、さまざまなAIの活用が模索されている。
ある程度から先は、AIの出した答えを信じるしかない
AIの活用には、ネットやクラウドを介したビッグデータの解析処理が伴う。その処理は、短時間で大量の計算処理を行うもので、人間の理解が完全には及ばないことが一般的だ。このため、人間は「ある程度から先は、AIの出した答えを信じるしかない」状態となる。
AIがはじき出した結果を目にする典型的な機会として、テレビやネットでの将棋の実況中継がある。対局がある盤面まで進んだ状態で、次の一手をどのように指すべきか、最善手を見極めたい。
こんなときに、AIはその盤面から先の手を、何億とおりも計算して評価する。そして、得られた最善手を画面上に示す。ところが、ときとして、示された手がどうして最善といえるのか、解説者であるプロの棋士にも理解されないことがある。