(写真はイメージです/PIXTA)

勤務態度が悪い、協調性がない、トラブルばかり起こす……会社として更生してもらうよう努力を続けても一向に変わらない「迷惑社員」が社内にいた場合、スムーズに辞めさせることは可能なのでしょうか? Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が「退職勧奨」のスムーズな進め方とトラブルを避けるための注意点について解説します。

トラブルを避けるためのポイント「8つ」

退職勧奨の進め方を誤ると、後にトラブルへと発展する可能性があります。そのため、退職勧奨はさまざまな面に配慮したうえで慎重に進めなければなりません。

 

退職勧奨がトラブルとならないために注意すべきポイントは、主に次のものがあります。

 

「強要」は違法…損害賠償請求の可能性も

退職勧奨は単に退職をすすめるのみであり、なんら違法な行為ではありません。一方、退職を強要する「退職強要」は違法であり、退職強要をすれば会社が損害賠償責任を負う可能性があります。

 

そのため、退職勧奨をする際には、違法な退職強要であると判断されないよう、充分注意しなければなりません。

 

退職勧奨のつもりが退職強要とならないための主な注意点は、次のとおりです。

 

1.退職勧奨に応じるかどうかは任意であることを説明する

退職勧奨に応じるかどうかは、あくまでも従業員側の任意です。この点を誤解させる言い方をしてしまえば、退職強要と捉えられてしまいかねません。そのため、退職勧奨をする際には、退職するかどうかの選択権は従業員側にあることをよく説明しておきましょう。

 

そのうえで、「退職を命じます」「会社を辞めてください」など、退職を拒否できないと思わせるような言い方は避けるべきです。

 

2.マイナスの条件を提示しない

退職勧奨にあたって、退職金の上乗せ支給など従業員にとってプラスとなる条件を提示することは、なんら問題ありません。

 

一方で、たとえば「退職勧奨に応じなければ解雇する」「退職勧奨に応じなければ遠方に転勤させる」「退職勧奨に応じなければ減給する」など、マイナスの条件の提示は避けましょう。これらの発言は、退職を強要していると判断される可能性があるためです。

 

3.面談の頻度や時間

退職勧奨をする際には、面談の設定についても注意しましょう。

 

たとえば、毎日のように退職勧奨の面談が設定されれば、退職強要であると判断される可能性があります。また、あまりにも長時間に及ぶ面談や大勢で取り囲むような面談も、避けるべきです。

 

4.相手の人格否定などは行わない

たとえ従業員側に非がある場合であっても、相手の人格否定となる発言をしてはなりません。たとえば、「馬鹿野郎」「死んでしまえ」「役立たず」「お前が会社にいるとみんなが迷惑する」などです。

 

このような発言で相手を追い込んでしまうと、退職強要やパワハラなどに該当すると判断される可能性が高いでしょう。

 

5.退職を拒否されたら面談を打ち切る

退職勧奨に応じるかどうかは、従業員次第です。そのため、退職を明確に拒否された場合には、それ以上面談を続けることは避けましょう。

 

拒否しているにもかかわらず、執拗な説得を続けてしまうと、退職強要となりかねません。

 

6.従業員に有利になる条件を書面で提示する

従業員への条件の提示は、書面で行うとよいでしょう。口頭で説明するのみでは勘違いや聞き間違いなどが生じやすく、後にトラブルとなる危険性があるためです。

 

7.面談内容や合意内容を書面化する

退職勧奨を行う際には、面談内容や合意内容を、その都度書面に残しておきましょう。

 

せっかく退職の合意ができたとしても、書面に残していなければ、あとから合意などしていないなどと主張されてしまいかねないためです。また、退職強要があったなどと主張されてしまうリスクもあります。

 

また、相手に了承を得たうえで面談の様子を録音しておくことも、トラブル予防策の1つとなるでしょう。

 

8.あらかじめ弁護士へ相談する

退職勧奨を検討する際には、あらかじめ弁護士へ相談しておきましょう。なぜなら、退職勧奨は1つのミスや失言が、後の大きな問題に発展してしまいかねないためです。

 

弁護士へ相談することで、従業員の性格や退職勧奨に至った原因など、その状況に応じた注意点などのアドバイスを受けることが可能となります。また、万が一後にトラブルとなった場合を見据え、合意書を作成してもらったり確認してもらったりすることもできるため安心です。

 

なお、従業員が退職勧奨に応じなかったものの、その従業員を退職させたい場合には、解雇を検討することとなります。

 

解雇のハードルは非常に高く、正当な理由のないままに解雇をしてしまうと、損害賠償や解雇無効を求めた訴訟へと発展してしまいかねません。

 

弁護士へ相談することで、解雇が可能かどうかなど最終的なゴールを考慮したうえで、退職勧奨に臨むことが可能となります。

 

 

西尾 公伸

Authense法律事務所

弁護士
 

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本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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