世界の「再生可能エネルギー」事業のいま
風力発電所や太陽光発電所などの再生可能エネルギー資産は、比較的低い運営コストで、長期的に安定した、インフレ連動型の収益を生み出します。
英国では、契約上の制度で、収益がインフレに連動しています。また、これらの再生可能エネルギー資産の多くは、負債が少ないか、あるいはまったくない状態で資金を調達しています。
その結果、スタグフレーションの環境下で、他の多くの資産よりもはるかに優れたパフォーマンスを発揮することが可能です。
再生可能エネルギー事業から得られるキャッシュフローの詳細な性質は、国ごとに異なります。
イギリスは「インフレ連動型」契約
英国における、再生可能エネルギー支援に使用されるもっとも一般的な契約の仕組みは、インフレへの連動を含んでいます。
ほとんどの新規プロジェクトで採用されている差額契約(CFD)では、生産者は15年間、インフレ(CPI)に連動した契約価格で実質的に電力を販売することができます。支払いは、英国政府が支援する団体によって保証されています。
15年後以降は、電力は市場価格で販売されるようになるため、収益は将来の電力価格に依存しますが、エネルギー価格とインフレ率の間には連動性があるため、暗黙の連動性が維持されることになります。
英国の古い契約(Renewables Obligation Certificates、ROC)は、仕組みは異なりますが、RPIに連動するROCの支払いによって、長期間(当初20年契約、現在では残存15年以上残るものはない)にわたってインフレとの連動性があります。
英国の風力発電所や太陽光発電所が政府の支援なしで建設される場合においても、ABInBev、Unilever、McDonalds、エネルギー事業者などの多様で信用力のある取引先と、長期契約および多くの場合において、インフレ連動型の契約を締結しています。
これらを踏まえた当社の試算によると、インフレ率が年1%上昇すると、英国の再生可能エネルギー事業ではリターンが年0.8%増加することになります。
その他ヨーロッパは多くが「固定価格型」契約
欧州では、再生可能エネルギー支援制度は国によって異なります。英国と同様に、これらの制度は時代とともに進化してきました。さまざまな支援制度のなかには、インフレ連動型と固定価格型の両方がみられますが、ほとんどの国が固定価格型の支援制度に移行しています。
一部の支援制度では、現在経験しているような、エネルギー価格が上昇した環境下で資産が利益を得るような、アップサイドの可能性を持つものもあります。また、以前は一般的ではありませんでしたが、企業の電力購入契約にも変化の兆しが見えており、インフレに連動する要素が含まれる場合があります。
過去に締結された既存の固定型契約は、固定金利債券のように、インフレ率が急上昇するとその魅力を失うことになります。既存のインフレ連動型契約やアップサイドの可能性がある契約は、英国の資産と同様にインフレ率の上昇に対するプロテクションを提供します。
新規契約の場合、価格設定は契約期間と価格の両方で、一般的な市場環境を反映したものになります。
たとえばドイツでは、価格は主に固定型で契約されていますが、新規契約の価格に関しては、この1年で大幅に上昇しています。ドイツの契約期間は従来10年未満となる傾向がありますが、こちらも進化しており、最近では企業による10年間の電力購入契約が注目されています。
英国でも欧州でも、政府や企業との長期契約によってカバーされない電力を生産する資産もあり、それらの電力は一般的な市場価格で市場に販売されます。
もちろん、再生可能エネルギー資産の収益は、価格×発電量に等しくなります。再生可能エネルギーの発電量は、風速や風量、日照時間、またメンテナンスなどに必要な「停止時間」によって異なります。これらは比較的予測可能であり、特に中長期的な期間で見た場合には、予測可能性はさらに高まるでしょう。