本記事は、シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社の『マーケット情報』を転載したものです。

公益セクターと再生可能エネルギーの「類似点」

今日私たちが知っている再生可能エネルギー産業は、前回スタグフレーションが発生した時期には存在していませんでした。

 

しかし、安定的なキャッシュフロー特性だけでなく、投資家は、高インフレと成長鈍化の時代における、株式市場における公益セクターの長期的な実績から、さらなる安心感を得ることができます。

 

株式市場の公益セクターが、現在の再生可能エネルギー資産と完全に一致するわけではありませんが、いくつかの類似点があります。

 

たとえば英国では、公益セクターの規制価格とインフレ率のあいだに強い関連性があるという長期的な実績があります。しかし、これはどの地域でも当てはまるというわけではなく、たとえば米国には当てはまりません。

 

1987年以降の英国のデータを用いると、RPIインフレ率が4%を超えた12ヵ月間の内、79%において、公益事業がプラスの実質リターンを生み出しています(この期間の大半で、英国の主要なインフレ指標であったRPIインフレ率を使用。RPIは、同期間のCPIと比較して平均0.8%上回っていたため、CPIインフレ率が3.2%以上であることとほぼ同様)。

 

また英国の公益セクターは、同期間の73%において、英国株式市場全体をアウトパフォームしました。

 

[図表3]が示すように、アウトパフォームの程度は、インフレ率が高く、経済成長が減速している環境下でもっとも大きくなっています(OECDの英国の景気先行指数が12ヶ月移動平均を下回っていることに基づく)。

 

その逆もまた真なりで、成長率が高く、インフレ率が低い時期には、パフォーマンスは、より循環的な他のセクターに対して遅れをとっています。

 

このような堅調なパフォーマンスは、公益事業の収益とインフレとの関連性を示すだけでなく、ストレスの多い時期に市場が必要不可欠な実物資産をどのように評価しているかも示しています。

 

米国の公益セクターを分析すると、インフレとの強い収益連動性がない場合でも、こうした環境下で高いアウトパフォームを示していることがわかります。

 

[図表3]公益事業は、インフレ率が高く、景気減速時にアウトパフォームする傾向
[図表3]公益事業は、インフレ率が高く、景気減速時にアウトパフォームする傾向

スタグフレーション下でも「強い」再生可能エネルギー

再生可能エネルギーは、景気変動の影響を受けにくく、安定した収益源を提供します。パフォーマンスは景気後退の影響を受けにくく、耐性があります。さらに、インフレとの強い連動性があることも利点です。

 

これは一部の地域では契約の制度上、明確ですが、他の地域でもエネルギー価格を通じた暗黙の連動性があります。

 

またこれらの事実は、再生可能エネルギー設備への大規模な投資の必要性を考慮する前の話です。再生可能エネルギーはもっとも安価な新しい発電方法であり、またエネルギーの安全保障性を向上させます。

 

EUのRePowerEU計画では、ロシアの化石燃料からの脱却をはかるため、再生可能エネルギーへの移行を計画の中心に据えています。再生可能エネルギー容量の大幅な拡充がなければ、ネット・ゼロの誓約も水の泡となります。

 

再生可能エネルギーの価格体系は、この分野に多額の資本を割り当てるインセンティブを与えるのに、十分魅力的であり続ける必要があります。

 

再生可能エネルギーは、スタグフレーションの環境下では、他の多くの資産よりもはるかに優れたパフォーマンスを発揮するといえるでしょう。

 

 

福澤 基哉

シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社

執行役員/プロダクト統括
 

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