耐久性に優れた風力発電
アベイラビリティという点では、風力タービンは通常95%以上の時間帯で発電することが可能です。定期点検やメンテナンスに必要な日数は、一般的には年間20日以下であり、風の弱い時期に予定することができます。
製造業者はこの信頼性に自信を持っており、タービンの耐用年数である最初の15年間は、このレベルの稼働率を保証しています。そしてそれ以降も、残りの運転期間中に期待されるアベイラビリティは数%低下する程度で、優れた性能は維持されます。
風量や日照量は、年によって変動しますが、これは景気循環とは関係しないことから、再生可能エネルギー資産はスタグフレーションに陥るかどうかとは無関係です。また将来的に風が弱くなる、日照時間が短くなるということもありません。
また長期的に見れば、発電量の変動は平準化する傾向があり、その結果、資産の耐用年数にわたり標準偏差は比較的小さくなります。
日光、風…再生可能エネルギーはコストが「ゼロ」
コスト面における、他の資産と比較した再生可能エネルギーの重要な差別化要因には、主要なインプットコストの多くがゼロであることがあげられます。
日照量や風量はなんのコストも発生させません。また、メンテナンス費用や借地料などのコストは、収益に占める割合が比較的小さく、通常は中長期的にわたって固定されるか、インフレ連動型になっています。これに対し製造業は、人件費やエネルギーコストの影響を大きく受けます。
その結果、再生可能エネルギーのキャッシュフローは非常に予測可能性が高く、景気循環に左右されにくく、インフレリスクにも積極的に対応することができます。
再生可能エネルギーはこのような安全性を有するため、景気後退局面において、非常に貴重な資産クラスとなります。
収益は「マーチャントモデル」を採用
金利水準、業界の規制、天候など市場の動きにより収益も変動
北欧や南欧などの他の市場や、英国の一部では、収益は完全なマーチャントモデルに従っています。
このモデルでは、収益の100%が市場のスポット価格に依存しますが、前述したように、市場価格もインフレ率と連動性があります。そのため収益プロファイルはより変動しやすくなりますが、コストプロファイルは同様に予測が可能です。
レバレッジなしのプロジェクトの場合、資産の収益の不確実性の程度は、以下の[図表1]に示すように、契約上の収益とマーチャント収益の割合によってほぼ決定されます。
契約上の収益が多ければ多いほど、収益は低くなりますが、より確実性が高くなります。一方でマーチャント収益の割合が多いほど、収益は高くなりますが、より変動性が高くなります。
この収益モデルの形状は、さまざまな再生可能エネルギー資産において類似していますが、異なるプロジェクトに期待される実際の収益は、無数の要因の影響を受けます。
たとえば、現在の金利水準、業界規制レジーム、インフレ率に連動する割合、天候などによる稼働状況、リスクなどが含まれます。
「マーチャントモデル」採用によって順調な収益を上げる英国、欧州
一般的な経験則として、完全契約型資産からの実質リターンは、ベンチマークとなる国債(例:英国の指数連動国債、ドイツ国債)に対して十分なスプレッドを提供します。完全マーチャント型資産の収益は大幅に高く、英国では名目ベースで2桁台前半、欧州では1桁台後半になる傾向があります。
低炭素社会への移行を実現するためには、世界中で再生可能エネルギー設備への大規模な投資が必要です。
したがって、再生可能エネルギーへの投資を促すような価格体系が設計されていることは、驚くべきことではありません。長期間にわたりインフレに連動し、弾力性があり安定的なキャッシュフローは、多くの投資家の投資基準を満たしています。