再生可能エネルギーのデュレーションが短くて済む理由
テクニカルな面では、次に述べる2つの理由から、再生可能エネルギーのデュレーションは短いです。
1.30年で価値を償却できる
第1に、耐用年数(太陽光や風力では約30年)が終了した時点で、再生可能エネルギー資産に想定される残存価値がゼロであるためです。その価値は、資産の売却額ではなく、耐用年数中に予測されるキャッシュフローのみから導かれます。そして、その価値の大部分は、最初の15年間のキャッシュフローから得られます。
対照的に、30年債の場合、その価値の大部分は30年後の元本返済によってもたらされるため、現在価値は実質利回りの変動に非常に敏感です。再生可能エネルギーは、30年の耐用年数で価値を償却するため、そのデュレーションは思ったよりも短いのです。
2.国債よりもはるかに高い期待リターン
第2に、再生可能エネルギー資産の評価に用いられる割引率には、国債利回りに対する大きな「スプレッド」が含まれています。このスプレッドは、運営リスク、需給関係、非流動性、リスク選好度などを反映しています。
歴史的には、このスプレッドが割引率の大部分を占めてきました。事実、再生可能エネルギーの利回り、つまり期待リターンは、国債よりもはるかに高いです。また、債券数学では、他の条件が同じであれば、利回りが高いほどデュレーションが短くなり、国債利回りの変動に対する金利感応度が低くなります。
さらに、スプレッドを構成する他のリスクプレミアムは、債券利回りとは関係がないさまざまな要因によって変動するため、最近経験したような債券市場のストレス時には、割引率の平準化につながります。
3.短期的な評価額の変動は投資家のリターンに影響しない
また、最後にもう1つ考慮すべきことがあります。
再生可能エネルギーは多くの場合、バイ・アンド・ホールド方式で購入され、投資家はその保有期間中に発生するキャッシュフローを目的として保有します。
インフレ率は受け取るキャッシュフローの水準に影響を与えますが、利回りの変化による割引率の変化は、キャッシュフローの評価方法に影響を与えるだけで、資産の期待パフォーマンスには影響を与えません(満期保有目的の債券と同様)。
このため、短期的な評価額の変動は、投資家が獲得する長期的なリターンにはあまり影響を及ぼしません。
全体として、再生可能エネルギーの評価額は、債券利回りの上昇から生じるリスクから免れることはできませんが、スタグフレーション時に、より厳しい状況に置かれる他の資産クラスと比較して、再生可能エネルギー資産はその有する特徴で、スタグフレーションの嵐を切り抜けるための、より強力な基盤を築いているといえるでしょう。