1998年と今回の相場の「相違点」
1998年は、8月から9月にかけてと10月にそれぞれ米ドルの急落が起きています。このなかで10月に発生した米ドル急落「第2波」の一因として挙げられるのが「FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ」でした。
1998年は9月に大手ヘッジファンド危機が表面化し、金融市場は不安定になったことから、FRBは9月から11月にかけて3ヵ月連続の利下げを行いました。これが米ドルの反発を抑え、下落リスクを再燃させたと考えられます。
10月は6~8日の3営業日だけで、130円台半ばから110円割れ寸前まで20円以上の米ドル暴落が起こったのでした。
この点が今回は大きく異なるのではないでしょうか。今回の場合、先週のCPI発表を受けて利上げ幅縮小の可能性は高まったでしょうが、それでも利上げが終了する、ましてや利下げを早期に行うといった見方にはなっていません。
そもそも先週後半の米ドル急落は、米金利との関係で見ると「下がり過ぎ」の可能性がありました。
年末が近付くなかで、米ドル買いポジションの手仕舞いが入りやすかったことから、米金利低下で説明できる範囲を大きく超えて米ドルが急落したと見ています(図表4参照)。
今のところ、12月FOMC(米連邦公開市場委員会)では0.5%の利上げが行われ、政策金利のFFレートは現行の4%から4.5%に引き上げられる見通しとなっています。
そうであれば、これまで米ドル/円と高い相関関係が続いてきた米2年債利回りの低下は限られ、むしろ上昇する可能性もあるでしょう。
以上からすると、米ドル/円も先週からの急落が落ち着くに連れ、米金利上昇に連れる形で米ドル高・円安に戻す可能性も出てくるのではないでしょうか。
そのような考え方を前提に、今週の米ドル/円の予想レンジは137~142.5円中心で想定しています。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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